• 食べるクジラ
  • 商売・集客
  • 料理・レシピ
  • 知ってトク!
  • 学んで博学!

いきものとしてのくじら

日本の近海には何種類のクジラが棲息しているのですか?

現在、世界には84種類の鯨類がいると考えられています。近年、新種のツノシマクジラ(ヒゲクジラの仲間)が日本で発見されましたが、その分布や生態、生息数はまだ不明です。このように、広大な海に暮らすクジラのことですから、今後も世界のどこかで新しい種類が発見される可能性もあるのです。
日本周辺の海には40種類の鯨類が生息していると思われます。世界に現存する種類のおおよそ半分の数になりますね。鯨類にはイルカの仲間も含まれますが、イワシクジラ、ミンククジラやツチクジラなど、食材としてのおなじみのクジラから、ロングマンオウギハクジラやオガワコマッコウなど、みなさんにはちょっと聞きなれない名前のクジラまで、実にたくさんの種類のクジラたちが、私たちのすぐそばで暮しているのです。


日本周辺に生息する40種類のうち9種はヒゲクジラの仲間、残りの31種はハクジラの仲間。
ヒゲクジラ類:シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、ツノシマクジラ、ミンククジラ、ザトウクジラ、セミクジラ、及びコククジラ。
ハクジラ類:マッコウクジラ、オガワマッコウ、コマッコウ、オウギハクジラ、コブハクジラ、アカボウクジラ、イチョウハクジラ、ハッブスオウギハクジラ、ロングマンオウギハクジラ、ツチクジラ、イシイルカ(イシイルカ型)、イシイルカ(リクゼンイルカ型)、ネズミイルカ、スナメリ、オキゴンドウ、シャチ、コビレゴンドウ、ユメゴンドウ、カズハゴンドウ、ハナゴンドウ、ハシナガイルカ、セミイルカ、ハンドウイルカ、マダライルカ、スジイルカ、ミナミハンドウイルカ、サラワクイルカ、シワハイルカ、マイルカ、カマイルカ、及びハセイイルカ。

イルカ・クジライラスト:(C)河合晴義

クジラのハツ(心臓)って、どこにあるのですか?食べられますか?

収縮と拡張を繰り返し血液循環の原動力となってくれる心臓は命の要。クジラの仲間では心臓が右の図で示すように胸鰭の付け根のやや後ろあたり(体のほぼ真ん中、体の縦軸に対してほぼ中央の位置)にあります。
大きな鯨はやはり心臓も大きいであることは当然です。もっとも、その全体重と心臓の重さの比率をみてみると、ほかの哺乳類と大きな違いがない。大型のヒゲクジラ類の心臓はヨコに長く独特な形をしています。また、その作りをみると、サカナの心臓が2室に分かれているのに対し、クジラの心臓は4室に分かれています。これはほう乳類に共通する特徴なのです。


現在ではごく一般的に家畜(牛や豚、鶏など)の心臓(ハツ)は焼き肉や串焼きの食材とされてきました。また、動物によってハツ刺し等で生食する場合もあります。くじらも同様です。肉や皮だけでなく、心臓も美味しくいただけます。

日本人は、昔から鯨の食文化を築いてきました。とりわけクジラの70か所もの部分の調理法と食べ方が紹介されている「鯨肉調味方」という書物では、うす(心臓)は揚げ物にすると美味しいとされたようです。

現代でも独特な風味とコリコリとした歯触りを持つくじらの心臓の刺身は最高の珍味とされ、食べやすい大きさに薄くスライスしたものをにんにく醤油や生姜醤油でいただくのが通の食べ方とされています。また、牛や鳥のハツと同様、塩コショウや焼肉のタレで味付けしたものを焼いたり、炒めたりしても美味しくいただけます。

※クジラの心臓の大まかな比率は正確ではありません。

クジラはなぜ「回遊」するのですか?

クジラには「回遊」という習性があります。回遊は、クジラの中でも、とくにヒゲクジラのなかまに多く見られる習性で、長いものではなんと2万キロメートルも移動をするそうです。これは、地球をおよそ半周する距離です。クジラが回遊するのは、一般的に繁殖・子育てのためだと考えられています。地球の海は、水温で分けると、南極や北極近くの寒い海と、赤道近くのあたたかい海の2つに分けることができます。寒い海にはクジラのエサとなる生物(プランクトン、小魚など)がたくさん生息しています。しかし,水温が低すぎる海域は出産や子どもを育てるのには適していないのです。そのため,ザトウクジラやミンククジラ等は、夏は寒い海でエサをたくさん食べ、冬にはあたたかい熱帯や亜熱帯の海へ泳いでいって子どもを産んで育てているのです。クジラの仲間のなかでも、マッコウクジラは大人のオスだけがあたたかい海から寒い海へ回遊します。またイルカの仲間には一年中同じ海で生活する種類もいます。このように、クジラの回遊のあり方は種類によって異なっているようです。冷たい海でたくさん餌を食べてくじらが太り美味しくなってくれるのです。

くじらと人のつながり

日本人はいつから鯨をたべてきたのか?

日本は海に囲まれた島国です。日本人は、海の幸を重要な食料源として古来から利用してきました。日本近海は鯨の回遊路にあたり、約40種類ほどの鯨類が生息しています。そのため、なんらかの理由で海岸に流れ着く寄り鯨(ストランディング)も少なくありません。そうした鯨は昔から海からの恵みとしてありがたく利用されてきました。近代になってからも、日本各地でこのような寄り鯨の収益で建てられた小学校があり、現在でも残っています。

古代の人々は捕獲が比較的容易であった、寄り鯨の利用に始まり、やがて意図的な捕獲であるイルカ漁や捕鯨へと移行していったようです。多くの研究者たちは、貝塚などの痕跡から、日本では縄文時代早期(約9,000〜6,000年前)には鯨類が食され、おそくとも縄文時代前−中期(約6,000〜4,000年前)からは積極的な捕獲であるイルカ漁もおこなわれていたと考えています。

弥生時代以降になると、イルカだけでなくより大きなくじらも狙った捕鯨も行われていたようで、長崎県壱岐市の原の辻遺跡(紀元1世紀ごろ)からは「日本最古の捕鯨線刻画土器」が出土し、くじらの骨で作られたアワビオコシや骨剣などもこの遺跡から出土しています。さらに、壱岐市にある同時代のカラカミ遺跡からも鯨骨でつくられた農具が出土し、捕鯨の痕跡がうかがえます。また、壱岐市の鬼屋窪古墳(7世紀)の石室の2箇所にも「捕鯨図」と思われる線刻画が刻まれています。

飛鳥時代には、仏教の影響からか天武天皇が肉食禁止令(675年)を発布しました。その後もたびたび肉食禁止令が出され、日本では肉食が禁じられていきますが、当時、鯨は魚とみなされていたため、このような禁止令の対象となることはありませんでした。鯨は歌にも表れ、奈良時代に編纂された万葉集(759年)では、海などの枕詞「鯨魚とり(いさなとり)」として詠まれています。また、平安時代の文書にも、久治良の記載があり、鯨はオス、鯢はメスと区別していたことが記されています。室町時代には、鯨は鯛や鯉に匹敵する高級魚とされ、その大きさやめずらしさから、時の権力者への饗応料理として用いられたことが文献に残っています。

高級食材であった鯨ですが、江戸時代中期には庶民の食べ物となりました。古式捕鯨と呼ばれる捕鯨業が日本全国で急速に発達し、鯨の供給量が急増したことがその背景にあります。和歌山県の太地で慶長11年(1606)に「鯨組」が創設され、日本で最初の組織的突き捕り式捕鯨がはじまりました。そして、延宝3年(1675)には、より効率的な網掛け突き捕り式捕鯨へと進化しました。これらの捕鯨方法はすぐに全国へと伝わり、各地で捕鯨業が盛え、19世紀全般にはその隆盛を極めました。鯨組は当時最大級の産業であり、「鯨一頭で七浦うるおう」といわれたゆえんです。

当時は生肉類の保存の技術がなかったため、日持ちのしない内臓類は産地で消費されることが多く、赤肉や皮類は塩蔵品として、天下の台所であった大阪へと集積され、その後全国の消費地へと運ばれました。現在でも九州では「ゆでもの」といわれる内臓類の料理が有名です。また、関西でも「はりはりなべ」やコロといった鯨の食文化がより強く残り、鯨の需要は関東よりも西で高い傾向にあります。

また、保存が利いた塩蔵皮類は、日本各地で流通しました。江戸城下でも、遠い産地から運ばれた鯨皮が12月13日に行われた「すす払い」のあとに鯨汁として食べられていました。当時、どじょう料理屋で鯨汁がメニューとして登場し、その伝統は今日まで引き継がれています。江戸っ子は鯨好きだったようで、「魚偏に江の字でくじらと書かせたい」という川柳も残っています。塩皮は、海から遠く離れた山間部でも食べられるようになり、各地で貴重な動物性脂質として正月、祭りなどハレの日に食べられており、その一部が現在でも郷土食として残っています。

鯨と祭り

日本人にとって鯨は大切な生き物と考えられていたからこそ、鯨に関わる祭事が古くから各地で行われていました。およそ5000年前のイルカの骨を並べた縄文時代の祭事跡(石川県の真脇遺跡から出土)が有名ですが、現在も、鯨に関わる伝統的な祭が、全国に残っており、また近年新たに始められた鯨や捕鯨にちなむ祭も数々あります。

全国の鯨に関わる主な祭

◆北海道
・室蘭市
 室蘭八幡宮 神楽 鯨神の舞
 http://www.kaiun-goriyaku.com/spots/detail/id:27

◆宮城県
・石巻市
 牡鹿鯨まつり 古式捕鯨再現
 http://tikitabi.com/tikipedia/event/detail/E20080626-B006/

◆千葉県
・鋸南町
 浮島神社祭礼 鯨唄
 http://www.kanko.chuo.chiba.jp/c_event/6216/
◆東京都
・昭島市
 昭島市民くじら祭り
 http://www.akishima.or.jp/p/2008/08/post_5.html

◆静岡県
・沼津市
 諸口神社祭礼 鯨突き踊り、鯨突き唄
 【動画】http://www.youtube.com/watch?v=mH9rotPS6sA&feature=mfu_in_order&list=UL

◆三重県
・四日市市富田
 鳥出神社祭礼 鯨船神事
 http://www.bunka.go.jp/bsys/maindetails.asp?register_id=312&item_id=405
・四日市市南納屋町
 諏訪神社祭礼 鯨船神事
・四日市市磯津町
 塩崎神社祭礼 鯨船神事
・四日市市楠町南五味塚
 南御見束神社祭礼 鯨船神事
・鈴鹿市長太旭町
 飯野神社祭礼 鯨船神事
 http://mkfilm.photo-web.cc/gallery2.html
・尾鷲市梶賀町
 飛鳥神社 鯨船行事 ハラソ祭り
 http://www.47news.jp/localnews/mie/2011/01/post_20110111112331.html
・鳥羽市相差町
 相差天王くじら祭
 http://www.kankomie.or.jp/event/detail_5125.html
 http://tobakanko.jp/modules/event/index.php?p=17
・紀北町海山区
 大白神社 大例祭 大白祭り 古式捕鯨再現
 http://www.ztv.ne.jp/web/campinnmiyama/miyama/festival/oojiro.html

◆和歌山県
・新宮市
 三輪崎八幡神社祭礼 鯨踊り
 http://www.rurubu.com/event/detail.aspx?ID=13847
・串本町古座
 河内神社 河内祭り 御船の水上渡業
 http://gt.ohrai.jp/detail/30424/5888.html
・太地町
 飛鳥神社祭礼宵宮 宵宮頭屋祭り
 http://gt.ohrai.jp/detail/30422/5885.html
 飛鳥神社 お弓祭り
 http://www.wakayama-jinjacho.or.jp/jdb/sys/user/GetWjtTbl.php?JinjyaNo=8033
 太地浦勇魚祭り 綾踊り 鯨船パレード 鯨太鼓
 http://gt.ohrai.jp/detail/30422/5886.html

◆高知県
・室戸市
 浮津神社祭礼 鯨舟唄
 http://www.city.muroto.kochi.jp/hopweb/joho/html/joho00000032.htm
 ふるさと室戸祭 鯨船競漕、鯨舟の唄
 http://www.kochinet.ed.jp/muroto-c/tikikyouzai/dentou/kujirafune/kujirafune.htm

◆山口県
・長門市
 向岸寺 鯨回向
 http://member.hot-cha.tv/~htc09819/ekou.html
 通くじら祭り 海上古式捕鯨再現 鯨唄
 http://member.hot-cha.tv/~htc09819/maturi.html

◆長崎県
・上五島町
 メーザイテン(弁天財祭り) 鯨唄
 http://www.piconet.co.jp/nippon-net/nippon.cgi/see/12748
・長崎市万屋町
 長崎くんち 鯨汐吹き
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%B4%8E%E3%81%8F%E3%82%93%E3%81%A1
 【動画】http://www.youtube.com/watch?v=mOW76aKgBMU

ヒゲクジラの利用図

日本人にとってクジラは”海からの幸”として大切にされ、食用だけでなく、内蔵、皮、尾、骨やひげまで、全てを捨てることなく利用してきました。

映画・本の紹介

『食生活 第106巻8月号』「特集」鯨肉

かつて鯨は、日本人にとって貴重なタンパク源であり、また骨や筋、髭にいたるまで、さまざまな形で利用されていました。食文化はもちろん、工芸品などさまざまな文化にも活かされてきたのです。8月号の特集は、そんな鯨について、多角的に見ていきます。

書名:月刊食生活2012年8月号
発行:カザン
発行日:2012年7月10日
ISBN:978-5-101295-61-6

『土佐の鯨男 柳原勝紀伝』

日本に近代捕鯨が導入されて間もなく、古式捕鯨からの伝統ある捕鯨の町室戸で生まれ、一介の捕鯨労働者から小型捕鯨の経営者として身を起こし、やがて大型捕鯨へと発展させて日東捕鯨株式会社を設立し、日本の近代捕鯨の発展に大きく寄与した柳原勝紀氏の生涯を描いた。

書名:土佐の鯨男 柳原勝紀伝
著者:柳原紀文・大隅清治
発行:(株)水産タイムズ社
発行日:2011年11月21日
ISBN:978-4-902904-12-3

『クジラを食べていたころ−聞き書き 高度経済成長期の食とくらし』

戦後の食料難の時代における鯨肉消費と、その後の高度経済成長期の「食卓の変遷史」を各地域の人々に聞き書きし、食生活誌学から戦後日本社会史の一断面を浮かび上がらせる試み。

書名:クジラを食べていたころ−聞き書き 高度経済成長期の食とくらし(グローバル社会を歩く)
編者:赤嶺淳
発行:グローバル社会を歩く研究会
発売:新泉社
発行日:2011年12月15日
ISBN:978-4-7877-1115-1

『日本の鯨食文化−世界に誇るべき"究極の創意工夫"』

学校給食から「クジラの竜田揚げ」が消えて久しい。
鯨肉の供給量は、反捕鯨勢力の圧力で激減し、すっかり高嶺の花となった。
一度も食べたことがないという日本人が増えている。
私たちは古来、食べることを前提にクジラを捕ってきた。
皮も内臓も軟骨も、一頭を余すところなく食べる。
江戸時代に、八〇種以上の部位を解説した料理本が書かれていたほどだ。
なにより愛着と敬意をもってクジラに接してきた。
こんな優れた食肉文化は、世界を見渡しても他にないだろう。
固有の食文化こそが、民族性の基本である。
途絶えさせることなく、後世に伝えなくてはならない。
(本書表紙裏から)

書名:日本の鯨食文化−世界に誇るべき"究極の創意工夫"
発行:祥伝社(祥伝社新書)
発行日:2011年6月10日
ISBN:978-4-396-11233-2

『徳家秘伝 鯨料理の本』

日英のレシピ付で肉から内臓までの料理を紹介した国際的な鯨料理の本です!古くから物資の流通基地、天下の台所として栄えた大阪では、鯨は外食よりも家庭料理が主流でした。流通量が激減し、くじらが庶民の食卓から消えて久しくたちますが、浪花っ子のおかみが次世代のために家庭で鯨料理ができるようにと配慮した素材の紹介や下ごしらえを含む鯨料理書の決定版です。写真も大変美しく、鯨食にかかわるエッセイ7編も収録。

書名:徳家秘伝 鯨料理の本
発行:講談社
発行日:1995年4月15日
ISBN:4-06-207579-2

『Fukuoka Style vol.12』「特集」西海の捕鯨
 
江戸時代隆盛をきわめた日本最大の産業であったとされる西海捕鯨の特集号。江戸時代の捕鯨を描いた錦絵や絵図を美しいオールカラー紹介するのと同時に、当時をしのばせる捕鯨基地の現在の町並みを対比させる構成となっている。これ一冊で日本人と鯨の関わりの多くを知ることができる。1832年に刊行された鯨料理の専門書である「鯨肉調味方」の紹介も含まれ、文末には捕鯨史や捕鯨基地等の英語のサマリーも記載されている。FSは福岡からの情報発信を目的とした季刊雑誌(現在休刊中)。


書名:Fukuoka Style vol.12  「特集」西海の捕鯨  
発行:福博綜合印刷株式会社
発売:星雲社
発行日:1995年10月31日
ISBN:4-7952-9264-7

ページトップへ