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第3回 日本伝統捕鯨地域サミット 開催


 5月30日(日),高知県・室戸市で「第3回 日本伝統捕鯨地域サミット」(室戸サミット)が開催され,全国の捕鯨地域の人々を中心に,およそ500名が参加。捕鯨文化について活発な意見交換がなされました。
 古代からクジラを海の恵みとして捉え,感謝の気持ちを持ちながら利用してきた日本人。「日本伝統捕鯨地域サミット」は,日本人の暮らしの中で育まれてきた伝統を“捕鯨文化”として再検証して,そこに将来の捕鯨のあり方を探ろうと企画されたものです。
 2002年に山口県・長門市で開催された第1回サミットでは,縄文時代から現代まで続く日本の捕鯨史を通観して,「伝統捕鯨に関する長門宣言」を採択。2003年の長崎県・生月町での第2回サミットでは,東アジア全域に視野を広げつつ日本捕鯨のルーツをたどり,「伝統捕鯨に関する生月宣言」を採択しました。
 第3回目の開催地である室戸市は,江戸時代からおよそ350年間,絶えることなく捕鯨業が営まれてきた地域です。江戸時代には,“浮津組”と“津呂組”という2つの捕鯨集団が切磋琢磨することで地域興隆の礎を築き,近代商業捕鯨の最盛期には,泉井守一さんはじめ世界的な捕鯨砲手を数多く輩出してきました。
 室戸サミットでは「近世の捕鯨〜日本捕鯨文化の原型をみる」をテーマに,4名の研究者による基調講演と,地元代表の高校生を含む8名によるパネルディスカッションが行われ,「伝統捕鯨に関する室戸宣言」が全会一致で採択されました。また,捕鯨者たちの生きざまを伝える伝統芸能の披露や,捕鯨文化に関する資料展示,クジラ料理の無料試食など関連企画も開催。参加者たちにとって,自らを育んだ伝統を見つめなおすことのできる絶好の機会となりました。
 これまで,「日本伝統捕鯨地域サミット」の成果は,その宣言文がIWC(国際捕鯨委員会)へ提出されるなど,持続的捕鯨を推進させる大きな力となっています。次回の「第4回 日本伝統捕鯨地域サミット」は,2005年に山口県・下関市で開催される予定です。

▲会場は,室戸市保健福祉センター“やすらぎ”。入口では,室戸市・武井啓平 市長(写真左)が来場者を出迎える一幕も ▲会場内では,捕鯨図絵など土佐室戸捕鯨に関係する資料が特別展示されていました ▲室戸出身の近代捕鯨者たちの解説パネルに注目するのは,共同船舶株式会社・山村和夫 代表取締役社長(写真手前)
▲特に参加者たちの関心をひいたのは,中道寺の“くじら位牌”です。中道寺は“浮津組”が建立したお寺。“浮津組”が捕獲したおよそ1,000頭のクジラを供養したのが“くじら位牌”で,正面には「南無妙法蓮華経鯨魚供養」と記されています ▲鯨食文化に関する最新の資料パネルも展示されていました
開会式典
▲子どもからお年寄りまで,たくさんの方々が来場。捕鯨文化の「これまで」と「これから」について意見を交わしました ▲室戸サミットは,“土佐室戸勇魚太鼓”のみなさんの公演で開幕しました。勇壮な太鼓の調べが会場中に響き渡ります ▲関係者ならびに来賓の方々が登壇して,おごそかに開会式典が執り行われました
▲武井 市長による開会宣言。「先人のクジラとともに生きる知恵」に学び,今後の捕鯨のあり方に反映させたいと述べました ▲主催者あいさつは,財団法人 日本鯨類研究所・畑中 寛 理事長。室戸捕鯨は,現在の捕獲調査にも受け継がれていると発言 ▲高知出身の自民党・中谷 元 衆議院議員。「土佐人にとってクジラは血であり肉である」と語り,室戸サミット開催を祝しました
▲食物連鎖を例に,持続的捕鯨の必要性を説く自民党・山本有二 衆議院議員。室戸サミットの意義を熱く語りました ▲高知県議会・森 雅宣 議長は,捕鯨とともに発展してきた土佐室戸でのサミット開催を高く評価 ▲水産庁増殖推進部資源課・小松正之 課長が登壇。室戸サミット開催の趣旨説明を行いました
基調講演
▲「変革期を通して見た土佐捕鯨」と題し講演する室戸市郷土史研究家・島村泰吉さん。土佐室戸の捕鯨が長期に渡り継続した要因を,捕鯨史を概要しながら探りました ▲「近世以降における日本海側の捕鯨〜伊根浦捕鯨について」発表する京都府伊根町郷土史研究家・和久田幹夫さん。伊根浦にも,350年ほど前の捕鯨の記録があります ▲成城大学文芸学部・小島孝夫 助教授は,「近世における房総捕鯨〜醍醐組のツチクジラ漁の概要」について講演。捕鯨集団“醍醐組”と房総捕鯨の特徴を説明しました
▲専門家たちの日頃の研究成果をふまえた個性的な講演に,参加者たちの関心も高まるばかり。みなさん,熱心に耳を傾けていました ▲佐賀県立名護屋城博物館の学芸員・安永 浩さんは「呼子・小川島にみる近世西海捕鯨業」と題し,西海でも好漁場のひとつであった小川島一帯の捕鯨文化について解説 ▲この秋に完成予定の韓国・“蔚山(ウルサン)鯨博物館”を,建立総監督チェ・ドンイクさんが紹介。日本の研究機関も資料提供などで協力をしています
クジラと地域の魚料理試食会
▲捕鯨の伝統を見直そうと全国からたくさんの方々が参加するサミットです。クジラ料理の素晴らしさを,ぜひ味わってもらおうと「クジラと地域の魚料理試食会」も同時開催。早朝から担当スタッフたちが,“くじら弁当”(中央写真)と“くじら汁”(右写真)を用意してくれました
▲午前中の基調講演が終了すると,サミット参加者たちに“くじら弁当”が配られました ▲会場前の広場に設置された休憩所で,クジラ料理を楽しむみなさん ▲県外からの参加者たちは,捕鯨文化に関する映像を見ながら昼食をとりました
▲「昔よりも美味しい」と,懐かしのクジラ料理に頬を緩ますご婦人 ▲はじめてのクジラ料理に挑戦した坊や。お腹いっぱい食べて大きくなってくださいね! ▲“鯨大和煮缶詰”やクジラグッズの販売ブースも人気を集めていました
パネルディスカッション
▲午後の部は,“佐喜浜八幡宮古式行事保存会・俄(にわか)部会”のみなさんによる郷土芸能“佐喜浜俄”でスタート。“佐喜浜俄”は,セリフを役者に伝える“おぼん持ち”がいる点で全国でも珍しいもの。クジラをとりまく状況を面白おかしく風刺して会場をわかせました ▲室戸小学校6年生のみなさんによる“鯨舟唄”も披露されました。その堂々とした公演に客席からは大きな拍手が送られました
▲近世日本の捕鯨文化を検証・再評価することをテーマに,パネルディスカッションが行われました。コーディネーターとして舵取りを務めるのは,水産庁の小松 課長 ▲近世捕鯨の今日的意味を語る桜美林大学国際学部・高橋順一 教授。かつて日本各地で行われていた捕鯨の多様性にふれ,現状にあった捕鯨がありうることを示唆しました ▲金沢医科大学・平口哲夫 教授は,北陸の近世捕鯨を民族考古学的視点から考察。古代から現代まで,「日本の捕鯨文化の根っこは変わっていない」と発言しました
▲アメリカ型捕鯨について解説する甲南女子大学・森田勝昭 教授。「近代的」産業であったアメリカ型捕鯨を,伝統文化としての側面を持つ日本型捕鯨と比較しました ▲人と動物,自然環境との関係から捕鯨文化を捉えなおす東京大学農学部・林 良博 教授。江戸時代の捕鯨に学び,持続的な捕鯨を推進する必要性を強調しました ▲捕鯨とマグロ漁業の関係に言及した高知県鰹鮪漁業協同組合・濱窪昌彦 代表理事組合長。「南氷洋捕鯨で得た情報が,マグロ漁業の漁場開拓につながった」と述べました
▲地元室戸市の代表として登壇した室戸高校3年生・池本香純さん(右写真)と大畠千明さん(中央写真)。ふたりは事前に学校でアンケート調査を実施。「鯨について室高生100人にききました」と題して発表してくれました。「350年に渡る捕鯨の歴史が室戸にある」ことを知る生徒は全体の67パーセント。家族が捕鯨船に乗っていたという生徒もいたそうです
▲和やかなムードのなか進行する室戸サミット。ユーモアを交えながら交わされる討論に,客席から笑いがこぼれる場面も ▲客席からも積極的に質問が寄せられます。パネリストのみならず会場にいた全員が参加しての討論となりました ▲昨年の生月サミットで活躍した生月町博物館“島の館”学芸員・中園成生さんも,客席からの特別参加です
▲最後は「伝統捕鯨に関する室戸宣言」がまとめられました。あらかじめ配布された案文をたたき台に,ディスカッションの成果をふまえて,全会一致での採択。この成果は,日本国政府代表によって,今年7月のIWCソレント年次会議に提出されます ▲最後は,次回開催予定地の山口県下関市・江島 潔 市長のあいさつ。「室戸同様に充実したサミットにする」と抱負を語りました

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