鯨論・闘論

 クジラが絶滅しないように守りながら,大切な資源として有効活用していく。そのような“持続的捕鯨”の考え方を支持する識者の主張を,ここに紹介いたします。
 それら主張に対するみなさんからのご意見・ご質問も同時に募集させていただきました。(現在は終了しました。)執筆者から回答のあったご意見・ご質問は,この場にて公開させていただきます。

非致死的調査だけでは,南極海の鯨類調査は成功しないことが証明された

財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

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財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問筆者は以前,この欄に「鯨類資源調査における致死的調査と非致死的調査」と題する文章を載せた際に,豪州を中心として,非致死的方法による南極海調査の計画( SORP )があることを紹介し,SORP による調査が早急に実行され,その結果を日本が実施している南極海鯨類捕獲調査( JARPA )と比較して,その実行可能性について,検討できることに期待を寄せた。
 その調査が今回,豪州とニュージーランドの合同調査( AWE )としてやっと実現し,2010 年 2 月から 3 月に掛けて,南緯 65 度から 72 度,東経 150 度から西経 150 度の間の海域で実施された。この調査には,反捕鯨の急先鋒である豪州の環境大臣が,わざわざ出港式に出席して調査団を激励するなどして,鳴り物入りで調査が開始された。そして,その調査報告書が第 62 回 国際捕鯨委員会( IWC )年次会議の科学委員会に,文書番号 SC/62/O12 として,提出された。
 早速にこの調査報告書を入手して,日本がほぼ同じ海域で実施した,2004/05 年の JARPA の結果と比較した。その結果,“日本が実施している鯨類捕獲調査は,非致死的方法で全て可能である”との,反捕鯨側の主張が,宣伝倒れに終わったことが判明した。

「調査捕鯨 乏しい成果,すぐに廃止を」への反論

新潟大学 人文学部・三浦 淳 教授

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新潟大学 人文学部・三浦 淳 教授 下記は新潟大学・三浦 淳 教授から鯨ポータル・サイトに寄せられた原稿を掲載するものです。文中に説明がありますように 2009 年 12 月 13 日付けの朝日新聞掲載の署名記事への反論として書かれたものですが,同新聞への掲載はなりませんでした。公表の機会を得たいということで当コーナーに打診があり掲載させていただくことになりました(そのため記事中で,反論先記事の執筆者個人名を明記させていただいております)。
 本来,議論としては反論先の朝日新聞記事も掲載すべきですが,直接に掲載することができませんこと,お詫びいたします。図書館などご利用いただければ幸いです。(編集室より)

鯨類資源調査における致死的調査と非致死的調査

財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

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財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問国際捕鯨取締条約 第8条の下で,日本が南極海で実施している鯨類の捕獲調査を止めさせるために,最近反捕鯨勢力は,国際捕鯨委員会(IWC)の中ではもちろん,直接に非合法の海賊行為や窃盗行為までして,必死の工作を展開している。その一環として彼らは,反捕鯨科学者を動員して,“クジラの調査はすべて,殺さないでできる”とする主張を盛んに宣伝している。
 完全水生であり,立体的に生活し,巨大であり,高速で遊泳する,クジラの資源調査には,クジラの特長を生かした種々の手段がある。確かに,クジラを殺さないでできる(非致死的)調査もあるが,その一方で,目的によっては,殺さなくてはできない(致死的)調査が必要であることを,彼らは認めようとしないか,あるいは故意に隠している。
 彼らが推奨する鯨類資源の調査手段として,“目視調査”,“自然標識調査”,“衛星標識調査”,“データーロガー調査”,“音響調査”,“生体組織採集”,“糞採集”,などが挙げられている。しかしながら,それぞれの手段は,鯨類への適用が理論的には可能かもしれないけれども,実際的には,調査対象とする鯨種,調査目的,調査海域の地理的,季節的条件,適切な調査船,乗組員,調査員の用意,調査費の調達等の理由から,実行が不可能である手段が多いことを理解する必要がある。

南極海で鯨類の調査をする必要性と新捕鯨構想

財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

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財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問「日本がなぜ遠い南極海まで行って,クジラの調査をする必要があるのか?」という質問を,捕鯨に反対する団体ばかりでなく,捕鯨の問題を真面目に心配してくれる人からもよく聞かれる。その質問に答えるには,南極海が世界の鯨類資源の宝庫であることを,最初に認識することが必要である。
 この事実は,第二次大戦による中断があったものの,捕鯨の全盛期であった,1933 年から 1978 年の間の近代捕鯨による世界の各海洋での鯨類の捕獲頭数を,国際捕鯨統計によってまとめると,よく分かる。
 すなわち,全体では 190 万 9 千頭であり,そのうち,南極海で 57 パーセント,南極海と同じクジラ資源を利用した南半球沿岸で 19 パーセント,北太平洋で 22 パーセント,北大西洋で 2 パーセントであり,南半球産の鯨類の捕獲が地球全体の 76 パーセントを占めていたことから歴然である。南半球産の鯨類は北半球産よりも大型であるので,捕獲クジラの生物量を考慮すると,その割合はさらに増加する。
 (※注:生物量=任意の空間内に存在する生物体の総量を,重量あるいはエネルギー量で示したもの。)

どうして日本はここまで捕鯨問題にこだわるのか?

水産庁・森下丈二 参事官

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水産庁・森下丈二 漁業交渉官 このコーナーへの投稿の第一弾として,「日本はどうして世界中の非難を受けながらも捕鯨再開にこだわるのか」という疑問についての考えを私なりにまとめてみたい。この疑問は様々な機会に呈されてきたが,その答えも様々である。捕鯨を支持する立場からは,科学的根拠に基づく資源管理を支持するから,日本の文化だからといったものが主張され,捕鯨に反対する立場からは,捕鯨関係者の政治力が強いから,一部官僚の独走,捕鯨が愛国主義の象徴となっているといった意見が聞かれる。日本人は英語が不得意だから世界の世論を理解できていない,もっと一般の日本人を啓蒙すべきだという記事もオーストラリアの新聞に掲載されたことがある。
 ここで,捕鯨にこだわる「日本」が,日本人一般なのか,一部の日本人なのか,日本のマスコミなのか,日本政府なのかによって,その答えは千差万別であろうが,本文は,あくまで私自身の立場から見た考え方である。

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