鯨論・闘論

南極海で鯨類の調査をする必要性と新捕鯨構想

財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

この記事へのご意見:11件

財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問「日本がなぜ遠い南極海まで行って,クジラの調査をする必要があるのか?」という質問を,捕鯨に反対する団体ばかりでなく,捕鯨の問題を真面目に心配してくれる人からもよく聞かれる。その質問に答えるには,南極海が世界の鯨類資源の宝庫であることを,最初に認識することが必要である。
 この事実は,第二次大戦による中断があったものの,捕鯨の全盛期であった,1933 年から 1978 年の間の近代捕鯨による世界の各海洋での鯨類の捕獲頭数を,国際捕鯨統計によってまとめると,よく分かる。
 すなわち,全体では 190 万 9 千頭であり,そのうち,南極海で 57 パーセント,南極海と同じクジラ資源を利用した南半球沿岸で 19 パーセント,北太平洋で 22 パーセント,北大西洋で 2 パーセントであり,南半球産の鯨類の捕獲が地球全体の 76 パーセントを占めていたことから歴然である。南半球産の鯨類は北半球産よりも大型であるので,捕獲クジラの生物量を考慮すると,その割合はさらに増加する。
 (※注:生物量=任意の空間内に存在する生物体の総量を,重量あるいはエネルギー量で示したもの。)

南極大陸を覆う厚い氷がゆっくりと海に移動するにつれて,岩盤が氷河に削り取られて海に運ばれた豊富な栄養塩と,春になって姿を見せはじめる太陽から降り注ぐ明るい光によって,南極海では植物プランクトンが爆発的に増殖し,それを餌とするナンキョクオキアミなどの動物プランクトンが大発生して,海を赤く染める。その頃,それまでに暖かい海で餌も取らずに子育てをしていて痩せ細った鯨類が,発生した大量の餌を求めて南極海に大挙して回遊してくる。そして,そこでもりもりと餌を食べて肥り,冬の繁殖活動に備える。
 このようにして,世界の海で海洋生産性の最も高い南極海は,かつても,そして主要鯨類資源が回復した現在も,世界の鯨類資源の宝庫なのである。

最近,石油資源は今世紀中になくなることが心配されている。石油のように,やがて使えばなくなる鉱物資源と異なって,鯨類のような生物資源には再生産力があり,その再生産力の範囲で資源を利用する限り,その資源は減少することなく,永く利用できる。しかも,鉱物資源は使わなければ,その資源を温存できるが,生物資源を使わないで放置することは,折角の自然の再生産力を活用しないので,かえって無駄なのである。
 そして,大型であり,良質の肉と油を生産する鯨類は,海洋生物資源の一部であり,現在 IWC が 20 年もの永い間実施している捕鯨のモラトリアムは,自然力の活用から考えて,極めて不合理な措置であり,許されるべきでない。

1948 年,現行の国際捕鯨取締条約(ICRW)の下に,その実行機関として,国際捕鯨委員会(IWC)は設立された。その初期において,鯨類資源の調査が初期段階にあった科学小委員会(SC)は,鯨類資源の管理方策について,明確な勧告を出せずにいた。そのため,IWC は近視眼的な措置を続け,主要な鯨類資源が著しく減少したことは確かである。
 しかし,鯨類資源の調査研究の発展によって,SC は 1960 年代までに自信を持って IWC に勧告を出せるようになった。それにも拘らず IWC は,SC の勧告を無視して,1982 年に商業捕鯨のモラトリアムを全く政治的に決議してしまった。そして IWC は,その理由として,「鯨類資源についての理解が不足している」ことを挙げた。

日本政府は,鯨類資源についての理解を深めて,モラトリアムを解除するために,南極海で鯨類捕獲調査を 1987 年に開始した。もしも日本の近海だけで資源調査をして,モラトリアムの解除を図っても,反捕鯨勢力は,「モラトリアムは世界全体に適用するのであって,世界の鯨類の宝庫である南極海での鯨類の状態が判らなければ解除できない」と難癖を付けるに違いない。

世界の人口爆発が続いており,地球温暖化が心配されて,世界の食糧危機が迫っている現在,地球の 4 分の 3 の面積を占める海洋の生物生産性への期待が,強く寄せられている。そして,生態系の構成員を総合的に,そして持続的に,利用する必要性が叫ばれている。
 そのような中で,海洋生態系の頂点に立っている,鯨類だけを利用しないで放置することは許されず,鯨類資源の宝庫である,南極海で捕鯨を早期に再開して,世界の食糧危機に備えることは,世界の情勢から必至である。
 したがって,それを阻止しようとする反捕鯨勢力は,飢えつつある人類の名において,糾弾されなければならない。

人間によって改変された南極海の生態系は,人間によって回復させる責任がある。
 南極海の捕鯨を最後まで続けた国は日本とソ連であるが,ソ連の旧体制が崩壊してしまい,南極海の捕鯨再建に向けて,鯨類資源をモニターする調査と研究をできる国は,有効な捕獲調査の実施が可能な規模の捕獲・処理設備と,経験ある技術者を温存している日本だけとなった。

幸いにして,捕鯨の再開を希求する日本は,世界のために現在,南極海で鯨類捕獲調査を実施してその大役を担っている。IWC が南極海で 1978 年から実施している国際協同鯨類目視調査を継続し,大きな科学成果を上げることができるのも,日本が鯨類捕獲調査を実施しているからである。それがなければ,日本から優れた調査船と乗組員を提供できず,このように大規模な調査は進められなかったであろう。

我々はこれまでに過去の商業捕鯨について,反省すべきことは十分に検討し,対応策を講じてきた。これから再開されるべき捕鯨は,かつての商業捕鯨のそのままの復活では決してない。新たな捕鯨は,海洋生態系を全体として安全に管理する方式によってなされ,鯨類を食料として完全に活用し,しかも条約第 8 条型の資源調査を伴う,資源管理型捕鯨でなければならない。そして,新たな捕鯨が開始されるならば,世界の宝庫としての南極海の鯨類資源は,人類の共有財産として利用され,その生産物と利益は,人類の福祉の増進に大きく貢献することになろう。

これから開始されるであろう,南極海における新たな捕鯨のあるべき姿について,私は,次の具体策を提案している。
 まず,現行の ICRW を廃棄し,国際南極海鯨類資源管理機関(IAEMO)を設立する。そして,その下部組織である科学小機関(SSO)が,生態系理論に基づいて,鯨類の捕獲許容量を算出し,IAEMO に勧告する。IAEMO は SSO の勧告を基にして,種別,系統群別に捕獲割当量を決定して,国際入札に掛ける。落札した国は,南極海で捕鯨操業する義務があり,IAEMO の定める操業規則に従って,捕獲物を,食料を主体として,完全利用するべく操業するとともに,SSO が定めた資源調査を実施する義務を生ずる。IAEMO は各操業体に国際監視員を任命して派遣する。IAEMO は落札によって支払われる基金を用いて,操業船に国際監視員を派遣するとともに,基金の一部を,食料の分配等,人類の福祉に使用する。

以上の私見に対して,忌憚のないご批判と,ご提言を期待する。

[この記事へのご意見:11件]

[ご意見:11]「鯨肉を食いたい人が本当にいるんですか」from:umepon さん

子供のころは,肉といえば硬い鯨肉。よく給食で出ましたが,余り良い印象は持っていません。
 国際的に孤立してまで捕鯨にこだわる理由がわかりません。「食文化・・・云々」との意見を見たことがありますが,鯨肉を食うことが食文化とは思えませんので,こじつけの様に聞こえます。
 偏見かもしれませんが,調査に便乗した食マニアを満足させるための調査捕鯨ではないですか。本当に調査なら,鯨肉をスーパーに卸す必要は無いと思いますね。調査の副産物なら,タダで学校給食にでも回すべきですし,それなら調査捕鯨も理解されると思います。
 一部の食マニアと高値取引の甘みを吸う水産会社の利権ではないですか。

[ご意見:11]「鯨肉を食いたい人が本当にいるんですか」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

Umepon さんが学校給食の際に食べた鯨肉に,よい印象を持てなかったのは,残念ですが,貴方と逆に,給食に出された鯨肉の味を,学校時代の思い出として,懐かしく思っておられる方も多数いらっしゃいます。

それはそれとして,“鯨食”は日本が世界に誇るべき洗練された文化ですが,クジラやイルカの肉を現在も積極的に食べている民族は,以下に紹介するように,世界に多く分布しており,Umepon さんが心配するように,日本の鯨食文化だけが国際的に孤立しているわけでは決してありません。
 お隣の韓国では,テレビ番組の『宮廷女官チャングムの誓い』に出てきたように,鯨肉は宮廷料理の食材として古くから珍重されておりましたし,今でも蔚山広域市南区では,鯨食料理店が軒を連ねており,釜山市の大きな魚市場では鯨肉の屋台店が並んでいて,鯨食が多くの人々に好まれております。
 インドネシアのレンバタ島では,マッコウクジラが伝統的に毎年多数捕獲され,その乾燥肉が山の民との食料交換に使われています。
 ノルウエーでは,ミンククジラを対象にした商業捕鯨が大規模に行われていて,鯨肉が家庭で盛んに食べられており,鯨肉を食材とする,立派な料理本が出版されているほど,普及しております。
 アイスランドでも商業捕鯨が再開されており,ナガスクジラやミンククジラの肉は国民の食料となっております。
 デンマークのフェロー諸島では,ヒレナガゴンドウの長い捕獲の歴史があり,追い込み漁法によってクジラが捕獲される時には,多くの住民が参加します。
 グリーンランドでも住民が大昔から捕鯨を行い,ナガスクジラやミンククジラの他に,今年からザトウクジラの捕獲も,IWC によって許可されました。
 米国では,アラスカの住民が,ホッキョククジラを食料として年間約 60 頭を捕獲しております。また,ワシントン州に住むマカ族に対しても,コククジラの捕獲が許されています。
 カナダでは,国際捕鯨取締条約を脱退してまでして,ホッキョククジラやシロイルカなどを捕獲して,食用にしています。
 ロシアでは,極東チュコトの住民が,コククジラを年間 140 頭捕獲して,食用としております。
 カリブ海に浮かぶ,セントビンセント及びグレナディーン諸島では,ザトウクジラが食料として捕獲され,セントルシアでも,コビレゴンドウなどを捕獲して,食料としております。
 その他に,太平洋諸島国や,南米諸国の中にも,装飾用の歯や魚の餌用の肉のために,イルカの捕獲がなされている国があります。

我々は,鯨類を,マグロ類と同じように,海洋から得られる生物資源の一部と理解しております。そして,生物資源は,使えばやがてなくなる,石油のような鉱物資源と異なって,繁殖による資源の再生産能力があります。この能力の範囲で間引けば,我々は生物資源を持続的に利用できるのです。

島国で,国土が狭く,陸上からの食料に乏しいですが,幸いにして,四面を生産力の豊かな海に囲まれている日本で生活してきた我々の祖先は,サカナは勿論,カイや,イカや,ナマコや,ウニや,海藻に至るまで,あらゆる海産の生き物を“海の幸”として有り難く食料として利用して,これまで生き延びてきました。その中にクジラやイルカも含まれます。その結果,我々は今,世界に誇る鯨食文化を築いております。
 それぞれの民族が長い間培ってきた文化は,尊重されるべきです。フランス人は,日本人が“平和の象徴”と思っているハトを好んで食べる習慣がありますが,これもフランスの食文化として,我々は認めております。インド人はウシを神聖な動物として,食べません。しかし,インド人は,ウシを食べる外国の人たちに,「神聖なウシを食べるな」などと,非難をしません。

現在も反捕鯨加盟国が多数を占める IWC は,科学委員会の勧告を無視して,条約の精神に反する商業捕鯨の一時中止措置を 20 年以上も続けておりますが,日本は,新しい持続捕鯨の創造を目指して,国際捕鯨取締条約 第 8 条に基づき,現在南極海と北西太平洋において,鯨類捕獲調査を続けております。そして,その副産物は,日本政府の指令に従って販売して,売上金を次の調査の費用の大部分に充当しています。
 日本が調査捕鯨を継続してできるのは,日本に鯨食文化が存在しているからであり,国民の皆様が調査の副産物である鯨肉を買って食べて,調査捕鯨を支えて下さっておられるのは,有り難いことであると感謝しております。

食文化は,その味の記憶を,次代の人々に継続させることが大切です。そこで我々は,学校給食に鯨肉を使って頂くように努めております。学校給食に鯨肉を使っている自治体が全国的に増えておりますし,当研究所では,朝日学生新聞の協力を得て,全国の小・中学校で,総合学習の一環としてクジラの授業を行った後,給食として鯨肉を食べてもらう運動を,数年来全国的に展開しております。

IWC が正常化し,捕鯨が復活すれば,多くの国民に,栄養があり,美味しい鯨肉を,安く提供できるようになると信じて,調査捕鯨の継続に努力しておりますので,皆様の正しいご理解と,温かいご支持を,宜しくお願いします。

[ご意見:10]「日本の調査捕鯨について」from:橋本 武夫 さん

日本の捕鯨船がアメリカ等,反捕鯨国に攻撃されているが,日本の捕獲数である 800 頭と云う数は,調査を超えて,商業目的であることは,明らかである。ここに問題があると判断される。何も調査だったら,こんなに多くなくても良いと思われ,正直いって日本は,自然保護に違反していると考えます。
 攻撃する気持ち,分からないではない。

[ご意見:10]「日本の調査捕鯨について」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

折角「鯨論・闘論」欄を読んで頂いておられるのに,貴方のコメントには,誤解や無理解がおありになるのは,残念に思いますと同時に,小生の筆の至らなさを反省します。

現在南極海では,日本の鯨類調査船団がシーシェパードという,悪質な反捕鯨団体による海賊攻撃に敢然と立ち向かいながら,粛々として調査を続けておりますが,彼らは単なる民間団体であり,豪州のような反捕鯨国の政府の一部が彼らの行動を黙認してはいるでしょうが,貴方が名指ししているアメリカ等の国の政府によって直接に攻撃されているのではないことを,先ずご理解頂きたく思います。貴方は「攻撃する気持ち,分からないではない」とおっしゃいますが,シーシェパードは,決して動物愛護団体でなく,純情な市民をだまし,強請り,たかりする,やくざ集団なのです。
 貴方は 800 頭のクジラの捕獲数を問題にしておりますが,我々が進めている調査は科学調査であります。調査には目的があり,その調査を成功させるには,資源を傷めない範囲で調査目的を達成するのに必要最小限の採集標本数を,統計学的に計算しなければなりません。それが,現在日本が進めている JARPA II の調査での年間クロミンククジラ 850 頭プラスマイナス 85 頭,ナガスクジラ 50 頭の数字です。この数字の根拠は IWC の科学委員会に提出した,調査計画書の中に明記しております。クロミンククジラの資源量は極めて大きいですから,統計学的に有意な標本数は,このような数字にならざるを得ないのです。
 日本は国際捕鯨取締条約第 8 条の下で,科学委員会の審査を経て,合法的に調査を実施しております。そして,第 8 条第 2 項には,鯨類資源の合理的利用の観点から,“採集して必要な調査を実施した後には,鯨体を実行可能な限り加工して利用し,その収益金は政府の指令書に従って処理しなければならない”と義務付けられています。我々はこれに従って調査鯨体を処理して,その生産物の収益金を次の調査の費用に使用しています。それでも調査費が不足するので,政府の補助金を頂いている状態です。
 もしも商業捕鯨でしたら,できるだけクジラが密集している海域で操業し,できるだけ大きな個体を効率的に捕獲して,高価で大量の生産物を販売して,利益を上げるように努めるでしょうが,日本が現在進めている調査は科学調査であり,調査海域に分布する対象鯨種をランダムに採集するように設計しておりますから,商業捕鯨のような効率のよい操業はできませんから,調査費用が嵩んで利益は出ません。
 貴方は捕獲調査の採集頭数が多いから自然保護に違反するとお考えのようですが,この考え方も単純であり,間違っています。生物資源には再生産力があり,加入率と自然死亡率の差を純加入率といい,その値は資源水準によって変化します。そして,純加入率の範囲でその資源を間引いても,資源が減少することはありません。日本の捕獲調査では,このような資源動態学に基づいて,資源に悪影響を与えない範囲で,必要な採集標本数を計算しております。そして,我々の調査結果は,南極海の自然保護に大きく貢献しております。
 クロミンククジラの資源量は南極海捕鯨が開始された時代には,8 万頭しかいなかったと推定され,捕鯨が盛んになると,過剰な捕獲によってシロナガスクジラ,ナガスクジラ,ザトウクジラなどの資源が減少するに伴って,同じナンキョクオキアミを餌とするクロミンククジラの餌の摂取量が増え,栄養がよくなり,繁殖力が増えて,資源量は急速に増加し,1970 年代までに 78 万頭にまで達し,南極海に広く分布するようになったけれども,その後,餌の競合種の資源が回復するにつれて,餌の摂取量が減少して栄養状態が悪化し,次第に分布域も狭くなりつつあることが,理解されるようになりました。これも日本が南極海で長い間進めている捕獲調査の成果のひとつです。

悪質な反捕鯨団体のデマ宣伝に惑わされることなく,「鯨論・闘論」欄によって捕鯨についての正しい理解をして頂いて,日本の鯨類捕獲調査を強く支持して下さることをお願いします。

[ご意見:9]「クロミンクが増えない理由」from:ホンブルグ さん

ご説明の中に
  > 1970 年代までにクロミンククジラの資源が環境収容量に達した
 と有りますが,この点が良く理解できません。

 鯨研の調査ではクロミンクは何時も変わらず成熟雌の 90 パーセント以上が妊娠する,つまり大部分が毎年子供を産むそうですが,生まれてくる子供達は一体どうなるのでしょうか。

 素人が考えても,このように生産性が高いのであればクロミンクの生息数は爆発的に増加せねばなりません。

 毎年妊娠という習性の無いシロナガスやザトウでも 10 パーセント前後の増加率が報告されているのですから,ミンクなら毎年 30 パーセントぐらい増えてもおかしくありません。
 これが 40 年近くも増えないで横這いであるとすれば,これはあるべき状態に比べて,劇烈な減少が起こっているとさえ言えると思います。

 採餌域では,或いは少しずつミンクが痩せていく現象が観察されているかも知れませんが,それは長期・緩慢な変化であり,来年の雌達と今年の雌達,それに昨年の雌達の状況は基本的には同じでしょう。

 環境収容量に達したとのお話ですが,これは到底説明にはなりません。 
 「何故増えないのですか?」⇒「環境収容量に達したからです。」
 「何故環境収容量に達したことが分かるのですか?」⇒「増えないからです。」
 これではお話になりません。
 それに 30 万頭程度のミンクの生息数など大した数では有りません。精々,越谷市の人口程度のものであり,それが繁殖海域を併せると地球の海面の半分にも達する面積に分布しているのです。

 ミンクの増えない理由・・・これについて先生のお考えをずばりご説明ください。

[ご意見:9]「クロミンクが増えない理由」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

ご存知のように,鯨類を含む,野生動物は,個体群ごとに,それが置かれている生態系の中で,生活しております。そして,ある環境の下でひとつの野生動物の個体群は,加入率が自然死亡率を上回れば増加しますが,個体群の資源量はどこまでも増えるのではなく,その環境には,その個体群の収容量に限度があります。そして,ある個体群が環境収容量の限界に達すると,加入率と自然死亡率が釣り合って,個体群は増加を停止します。さらに,この環境収容量は,環境の変化によって変動します。
 個体群の変動の生物学的仕組みとしましては,ある X 個体群の環境が一定の状態では,X 個体群は満限状態にあって,加入と死亡がバランスを保っています。そして,人間が X 個体群を利用しないけれども,X 個体群の餌の競合者である個体群の利用を開始して,それを強度に間引きますと,X 個体群の個体当りの餌の摂取が多くなることによって,栄養がよくなって,繁殖力が増し,発病が少なくなるので,自然死亡率が低下し,加入率が自然死亡率を上回って,X 個体群は資源量が以前より増します。つまり,X 個体群の環境収容量が大きくなるのです。

ところで,ご質問のクロミンククジラの場合について,資源変動の生物学的仕組みを考えましょう。南極海はクロミンククジラの餌場であるとともに,このクジラと同じ餌であるナンキョクオキアミを利用する競合者も,哺乳類はもとより,鳥類,魚類など沢山います。
 その中でもシロナガスクジラ,ザトウクジラ,ナガスクジラは,大型であり,多量の鯨油が生産されるので,人間によって,捕鯨の主対象となり,大量に捕獲されました。しかし,小型で,余り鯨油が生産されないクロミンククジラは,1970年代まで捕鯨の対象ではありませんでした。
 シロナガスクジラ,ナガスクジラ,ザトウクジラの資源が 1904 年から開始された南極海捕鯨によって,次第に減少しますと,彼らがそれまで餌として利用してきたナンキョクオキアミがそれらの鯨類によって食べられなくなったので,余るようになりました。その結果,捕鯨の対象でなかったクロミンククジラは沢山餌を食べられるようになり,栄養がよくなって,加入率が増し,自然死亡率が低下し,加入率と自然死亡率の差が大きくなって,急速に増加しました。南極海で捕鯨が開始される前には,クロミンククジラの資源量は 8 万頭であったのに,1970 年代までにそれが 76 万頭に増加したとする推定値があります。
 IWC は 1960 年代から南極海での捕鯨規制を強化し,1964 年にはシロナガスクジラとザトウクジラの捕獲を禁止し,1975 年にはナガスクジラの捕獲が禁止されました。かくして,クロミンククジラの競合鯨種の資源の減少は 1970 年代までに食い止められ,それらの鯨種は資源回復に向かい,それに伴って,クロミンククジラとの餌の競合が再び厳しくなったと考えられます。

鯨類資源研究者は資源動態学を応用して,クロミンククジラの資源量の変遷を追求しておりますが,その結果,クロミンククジラの環境収容量は 1970 年代に最高となり,その後は全体として徐々にそれが減少してきたと考えております。
 その推定は,生物学的にも支持されています。例えば,クロミンククジラの性成熟年齢は遅くとも 1950 年代から次第に減少してきましたが,その減少傾向は 1980 年代に停止し,最近では逆に増加する傾向が見られます。性成熟年齢の減少はこのクジラが早熟になったことを意味し,早熟の個体が増えると,それだけ子を産む雌の数が多くなり,加入率が増加したといえます。逆に最近の性成熟年齢の増加傾向は加入率が低下しつつあることの生物学的証拠になります。
 また,最近,胃内容量の減少と,脂皮の厚さが減少する傾向がクロミンククジラで観察されていますが,これらはこの鯨種の餌の量が減って,摂食量が減り,栄養が悪くなったことを生物学的に証明しております。
 この鯨種の妊娠率は,ご指摘の通り,最近でも 90 パーセントを保っていますし,確かにこの鯨種の繁殖率が大きいことを示唆しますが,残念ながら,出生までに胎児の死亡があることを考えると,この数字が出生率と同率であることを必ずしも意味しませんし,離乳期までの自然死亡率は求められていませんので,母親の栄養が悪いために,子に与える乳の量が減ったり,乳の組成が悪くなったりして,新生児の死亡率を高める可能性が考えられるので,妊娠率の大きさが加入率の大きさと並行するとはいえません。
 捕獲鯨の年齢査定によって,自然死亡率が推定されておりますが,新生児が採集できませんので,初期死亡率はまだ直接には推定されておりません。
 クロミンククジラの最長寿命は 50 歳で,シロナガスクジラの最長寿命 120 歳の 2 分の 1 以下です。この事実は,クロミンククジラの自然死亡率がシロナガスクジラのそれよりも大きい証拠です。そのために,クロミンククジラの加入率が高くても,加入率と自然死亡率の差である,純加入率は,貴方が想像するほど高くはないのです。

貴方は海の広さは広大であるから,クロミンククジラの資源量に限界はない筈であり,クロミンククジラの頭数はもっと多くてよいとお考えのようですが,南極海における捕鯨が開始するまでのシロナガスクジラの資源量は約 20 万頭,ナガスクジラのそれは約 30 万頭であり,そして,その時代のクロミンククジラの資源量は約 8 万頭であったと推定されております。このように,鯨類の環境収容量には限度があり,それは鯨種によって異なると,現在の鯨類資源学は教えています。
 しかも,環境収容量は環境の変化によって変化することも,資源学が教えてくれております。クロミンククジラと餌を競合する鯨種の資源量の減少に伴って,餌環境が向上した結果,クロミンククジラの資源量は 1970 年代には 76 万頭(この時代のクロミンククジラの環境収容量はこの数字よりも大きかったはずです)にまで増加しましたが,その後,餌の競合鯨種の資源量の回復が顕著になって,クロミンククジラの資源量は頭打ちになり,今後は環境収容量の減少に伴って,資源量が次第に減少すると推定されます。
 そのような傾向にあるので,IWC がクロミンククジラの捕獲のモラトリアムを続けることは不合理であり,人間が利用しなくても,この資源は自然に減少するのですから,捕鯨を速やかに再開してこのクジラを人類の福祉のために利用するべきであり,それが,かつて減少した鯨種の回復を促進するのにも貢献することになります。

日本が現在進めている鯨類捕獲調査は,それを長年に亘って継続することによって,南極海における鯨類資源の動向とその生物学的仕組みを解明するのに,大きく貢献しております。第 2 期の捕獲調査では,急速に回復しつつある,ナガスクジラとザトウクジラに対象鯨種を拡大して,鯨類資源の宝庫である南極海生態系の変化をモニターして,その生物学的仕組みを解明するべく努めています。
 どうぞ鯨類資源学について正しいご理解を頂いて,南極海捕鯨の早期再開を目指す,捕獲調査の継続と発展に,力強いご支持をお願いします。

[ご意見:8]「捕鯨を一時停止している理由は」from:abadon さん

我が国の捕鯨業は古くより連綿として続けられてきており,重要なタンパク源の供給として,原初は寄りつき捕鯨から現代の母船式捕鯨業まで進化発展を遂げてきました。 日本ではその歴史的背景から自然に捕鯨業が発生し,政府は資源の持続的利用のため規制をもうけてきております。
 これは現代でも同様であり,捕鯨に関する諸規制が撤廃されれば,沿岸域ではただちに捕鯨基地が設置され,鯨肉が市場に流通してしまうでしょう。捕鯨文化がある日本の宿命みたいなものです。

 なので現行政府は捕鯨を厳しく管理しており,一部の鯨種以外は原則捕獲禁止の措置をおこなっております。 現行の憲法下における基本的人権を踏まえて捕鯨を考えた場合,個人がクジラを捕獲し販売しようと起業した場合,自然下では規制はありません。 しかしながら上記のように政府は公共の福祉を考えた場合その営利活動により鯨類資源に毀損が生じないか,産業の発展を斟酌したり,その他権利関係上の問題の見地から諸規制していくものと思います。

 つまりは何人も法の下に自然に捕鯨を営む権利を有していますし,国民は鯨肉を食する権利を有します。そして現在,日本政府は国民に対して捕鯨を一時停止,つまりは当分の間営んではならないとしていますが,これには相応の理由が必要です。
 モラトリアムも期限付きであり商業捕鯨は再開可能としたからこそ日本国民は納得したものの,その約束たるや反故にされた感が否めません。 私は現状においては,捕鯨を一時停止する相応の理由が見あたらなと感じます。

 日本政府は少なくともEEZ内における持続的な捕鯨が行えるような枠組を整備し,国民の捕鯨活動は認めるべきではないでしょうか。主権的問題をIWCにあずけるべきではありません。

 捕鯨をおこない鯨肉を食する,食しきれる,そういった連綿とした文化を背景とした日本において,ごく当たり前のことが阻害されております。捕鯨を解禁した際に,鯨肉の消費減により捕鯨業が成り立たなくなってしても,それはそれです。捕鯨を禁止する理由にはなりません。
 捕鯨を一時停止している理由と,国民の権利や福利厚生を天秤に図っていただき,今後の在り方について熟考願います。

[ご意見:8]「捕鯨を一時停止している理由は」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

abadon さん,ご意見ありがとうございます。私宛に寄せられたご意見ではございますが,ご趣旨が行政に関わる大切な提起だと受け止めましたので,鯨ポータル・サイト編集室とも相談し,水産庁の森下丈二 参事官にご回答いただこうと思います。どうぞご了承ください。(大隅清治)


 大隅 顧問に代わって,森下が回答させていただきます。

abadon さんのご意見は,非常に共感できるご意見ですし,重要な問題提起であると思います。
 昨年の国際捕鯨委員会(IWC)アンカレッジ年次会議が,全く理不尽な理由から日本の沿岸小型捕鯨地域への捕獲枠要求を否決したことを受け,代表団の中前水産庁次長(当時)が発言しました。「日本としては国際捕鯨委員会との関係を根本的に見直さざるを得ない,その見直しでは国内からの意見を受けて,国際捕鯨委員会からの脱退,新たな国際機関の設立,そしてEEZ内における沿岸捕鯨の自主的再開の可能性を検討する」という趣旨の発言です。この発言も同様の気持ちから行ったものです。

現在日本政府が商業捕鯨を一時停止している理由は,1982年に採択された商業捕鯨モラトリアムの存在です。
 日本は当初この決定に異議申し立てをしましたが,米国からの圧力を受けて異議申し立てを取り下げました。日本代表団は,国際捕鯨委員会において商業捕鯨モラトリアムに反対の方針を貫いていますが,異議申し立て取り下げで,法的には商業捕鯨モラトリアムを受け入れたことになります。仮に日本が自主的にEEZ内での沿岸捕鯨を再開すれば,国際法違反という非難を受けることになります。
 しかし,ご指摘のように,商業捕鯨モラトリアム採択の際の「遅くとも1990年までにはモラトリアムを見直す」という規定は反故にされたと言えますし,約束を反故にされてまでなぜ商業捕鯨モラトリアムに従うのかという疑問は極めて自然だと思います。

鯨肉の消費が落ちているからという主張が,捕鯨の否定の理由とならないとのご指摘もその通りです。これでは,着物を着る人はほとんどいなくなったのだから,着物を着ることを禁止すべきだと言っているようなものです。

昨年からIWCでは「IWCの将来」というプロジェクトが開始されています。
 これは,IWCは機能不全に陥っており,このままだと崩壊するという危機意識に基づいて,ホガース議長(米国)が強力に推進しているもので,来年(2009年)のIWC年次会議をめどに,捕鯨支持国と反捕鯨国の双方が受け入れることができるパッケージ合意を目指しています。
 このパッケージ合意には日本の沿岸捕鯨も含まれることとなっており,私としては,これがIWCを通じて沿岸捕鯨が認められる可能性のある最後のチャンスではないかと考えています。
 その意味ではこの1年がまさに正念場です。このプロジェクトが失敗すれば,日本政府は決断を迫られることになりますが,その決断はなるべく多くの人の意見を伺い,広い支持を得ることが必要です。政府の対応をぜひよく見つめていただき,ご支援,ご批判をいただきたいと思います。(水産庁・森下丈二 参事官)

[ご意見:7]「Take Action」from:外国の者 さん

私は外国の者ですが,意見を率直に述べさせていただきます。

 まず,大隅先生は良くご存知だと思いますが,いわゆる反捕鯨国では捕鯨が大きな問題ではありません。持続的捕鯨が行われていても,困る人間や人権が侵害される人間などは,全くと言って良いほど,いません。捕鯨問題は小さな問題だからこそ,反捕鯨国が政策を変えることは絶対ないと考えます。その国の一般的な国民が捕鯨問題の解決について真剣に考えさせるような状況におかれていません。持続的捕鯨が行われていても彼らには実質的に損得がありませんから。

 それで,UNCLOS と ICRW などの国際条約から見ても持続的捕鯨がまったく悪くないわけで,日本は捕鯨を行っていれば良いのです。
 IWC が放棄している役割を果たすために新国際管理機関を設立する方法で良いでしょうが,持続的捕鯨を再開するまで,間違いなく反捕鯨国が政策を変えません。そして,持続的捕鯨を再開しても,反捕鯨国が政策を変えないのであれば,それはそれで良くて,捕鯨について同意しないままで結構です。日本人があまり好む方法ではないと思いますが,捕鯨問題はしょうがありません。捕鯨が良くないと反捕鯨国の国民が思う限り,自分らで国際的に行われる持続的捕鯨に参加しなくて良い話です。参加したくない国が IWC のように参加する国の邪魔にならないように何らかの仕組みが必要で,大隅先生の IAEMO 発想にそういったのが取り込まれているようですが,とにかくIWC のままでは明らかに持続的捕鯨が再開されることはありません。
 モラトリアムが採択されたのは1982年,RMP が完成されたのは1992年で,今はすでに2008年です。21世紀には,持続的捕鯨がすばらしいエコ産業の例になれるのに,捕鯨支持する国はいまだに反捕鯨の連中と付き合っていて,前に進んでいません。捕鯨に賛成するように説得しようとするのは時間の無駄です。そして上に書いたように,不要でもあると私は思います。

 今年中に,日本政府が持続的捕鯨再開への明確な道を発表すれば良いと思います。はっきりさせてほしいのです。来年まで我慢しなくても良くて,逆に反捕鯨国は日本が IWC を諦めさせるまで妥協はしないという戦略です。IWC においての捕鯨再開の可能性は見せ掛けです。ですから,堂々と持続的捕鯨のすばらしさを世界唱えながら,捕鯨容認国と協力して早く再開してください。とりあえず,沿岸や北西太平洋で再開して,韓国,ロシアなども参入するのであれば歓迎しましょう。
 それに,再開される捕鯨が持続的であれば,反捕鯨国のほとんどの国民はなんとか容認できるかと思います。政策が変わるまでは賛成するほどではないでしょうが,捕鯨と反捕鯨はやっと共存できるようになるでしょう。それから,捕鯨問題のような小さな問題ではなくて,気候変動などより大きな問題に力を入れていきましょう。

 これからも頑張って,この小さな問題を済ませてください。

[ご意見:7]「Take Action」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

貴方のご意見は,いちいち納得でき,私のように,捕鯨の早期再開を願って,新捕鯨構想を提唱している者に取りまして,力強い激励の言葉と受け止め,有難く読ませて頂きました。

現行の国際捕鯨取締条約(ICRW)は,ご承知のように,今から60年以上も前,第二次世界大戦直後の1946年に締結された比較的古い漁業条約ですので,前文に掲げておりますように,鯨類資源の利用と管理に対する理想主義を高らかに唱っておりますが,運営上に多くの欠陥を持っています。そのために,その後の鯨類資源と世界情勢の変化に適切に対応できないうちに,優れた ICRW  の精神は国際捕鯨委員会(IWC)の中で多数を占めた反捕鯨国によって踏みにじられて,今日の機能不全の状態に陥ってしまいました。
 従って,貴方が評価しておられるように,私自身も,ICRW の存在意義は既に失われたと感じております。ご存知のように,昨年の IWC 年次会議の終わりに,日本政府代表団は,「忍耐にも限界が来た。機能を失っている IWC に見切りを付けて,日本は ICRW からの脱退,代替鯨類資源管理機関の設立準備,沿岸捕鯨の自主的再開,を検討する」との力強い声明を発表しました。私はこの声明を夜中に現地からの同時放送で聞いて深い感銘を受け,感激してその夜は寝付かれませんでした。
 その後 IWC は正常化へ向けて今年3月に英国で中間会議を開催しましたが,IWC 議長国である米国は指導性を発揮せず,正常化への道は依然として霧に包まれてあり,現在チリで開催されている第60回 IWC 年次会議で,正常化の実現への具体的な第一歩が踏み出されることを期待します。

[ご意見:6]「必ずしも利用しなくて良い資源」from:牛尾 さん

資源があれば,必ず利用しなければならないというのは間違いだと思います。
 クジラは生態系の中で生きているのであり,放っておいても食物連鎖の中で必ず役に立ちます。人間が利用しなくても,長い目で見れば海の生態系維持に役立っているはずです。生態系が健全ならば,人間にも利益が帰ってきます。

 食糧危機は海も含めた地球生態系を人間が過剰利用し引き起こしたものであり,海の資源をさらに利用する事で解決できるものではありません。アフリカや長く植民地政策の下に置かれた国々は,一部の富める国によってその豊かな天然資源を奪われ,自分で消費できなくなったために貧しく飢餓に襲われる事になったのです。南極のクジラをまた一部の富める国が独占し,その資源のおこぼれを貧しい国に配るというのでは,貧富の差はますます開き,貧しい国の飢餓は救われないでしょう。地球温暖化などの異常気象も食糧危機の原因ですが,日本はまだ自国で穀物を作れるのだから,自国の食料自給率を上げ,外国から穀物を買い取る事をやめるべきです。日本が買いあさるから穀物は値を上げ,お金のない国の国民が穀物を買えず飢え死にするのです。日本は穀物を作れるのだから,自給率を上げ,安く輸出すべきです。それが食糧危機に対する一番の国際貢献です。

 どうしてもクジラを資源として使いたいならば,自国の領海内で捕鯨し,捕鯨文化維持に使えばよいわけで,資源が多いからと,世界共有財産である南氷洋まで日本の文化のために勝手に使いたいと言うのは通らない話だと思います。何故日本が独り南氷洋にまで出かけていってクジラを獲らなくてはいけないのか理解に苦しみます。南氷洋のクジラを利用するのが世界の共通認識で調査をするのであれば,日本だけがお金を出して独り調査をする事はないはずです。また,南氷洋調査をするにしても,その必要性が世界共通認識になってからでも遅くはないと思います。世界共通の財産の調査はみんなで行いみんなで利用すればよいのです。
 どうしても捕鯨をしたいならば,日本沿岸のクジラのデータを集め,沿岸捕鯨再開に向けて世界を納得させるための努力を最優先させたほうが捕鯨文化も守れると思います。
 南氷洋の資源をどう使うかは世界が決めることです。使わないと言う国が過半数を超えているのが今の現状です。様々な文化,価値観があるのだから当たり前です。たとえクジラが多くても,クジラが多い=商業捕鯨できるとはなりません。日本は勝手には南氷洋に手出しできないのです。
 日本の沿岸200カイリならば,国際捕鯨委員会の中でも他国から,日本の南氷洋調査捕鯨をやめる代わりに日本沿岸での捕鯨を認めるという案があったはずです。またアメリカからもこれと同じ話があったはずです。日本の責任で200カイリでの持続可能な捕鯨を検討してはどうでしょうか。もちろんこれとてクジラの保護に十分配慮したものでなくてはなりませんが,日本沿岸でミンククジラが本当に増えているのならば検討するべきです。
 調査捕鯨による鯨肉は,調査資金源になっているそうですが,こういう国際的な非難を浴びている調査の肉を国民は進んで消費するでしょうか?IUCNで絶滅が危惧されている鯨種を資源が健全に近い種とし,調査捕鯨の言い訳をしているようでは,例え調査が科学的であっても国民は納得しないでしょう。日本沿岸のミンククジラの調査,種に与える安全性を科学的に分析し,調査捕鯨によって海外世論を誤魔化した肉の流通などではなく,日本沿岸での商業捕鯨をどうどうと再開してこそ国民は安心してクジラを消費できるようになるのではないでしょうか?そうしてこそ捕鯨文化を守れるのだと思います。

 国際的な課題は日本が独り走りして行う事ではないと思います。

[ご意見:6]「必ずしも利用しなくて良い資源」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

本欄の議論に積極的に参加して下さり,長文のご意見を寄せて頂き,有難うございます。早速に読ませて頂きました。
 先ず,牛尾さんは「資源があれば,必ず利用しなければならないというのは間違いだ」とおっしゃっております。鉄や石油のような鉱物資源は,子供を生むことのできる生物資源ではないですから,利用すれば,その分だけその資源の量が減ります。従って,鉱物資源の場合には,おっしゃるように,差し当たり利用しないでおいて,将来の利用に備える方策もありましょう。しかし,それには我々は,生活の仕方を,高層ビルや自動車を利用しない,不便な昔に戻す覚悟と,その実践が必要でしょう。
 一方で,人間は動物の一種ですから,霞を食べては生きられませんので,数百万年前の誕生の時から,野生生物である生物資源を食料,その他に利用して生活してきました。幸いに,魚類や鯨類のような生物資源は,繁殖する能力を備えています。そのために,生物資源には,銀行利子に例えられる,再生産力(持続生産量)がありますから,その範囲内で生物資源を利用し続けても,元金に例えられる資源量を減らさずに,資源を末永く利用することが可能です。従って,鉱物資源と違って,生物資源の再生産力を利用しないでおくのは,折角の自然の力を無駄にすることになります。ここに,野生生物の資源としての利用を社会的に許される,生物学的根拠があるのです。
 また,生物資源にはそれぞれの環境収容量に限度があって,資源を利用しないで置いていても,資源が増え続けることはありません。従って,生物資源の保護だけを続けて,全く利用しないで,満限状態に置くのは,無駄であり,間違いなのです。
 生物資源のもう一つの特性として,資源が環境収容量の約半分のところで,最大の持続生産量,例えれば,最大の利子が得られます。そして,資源が増大して環境収容量に近づくほど,かえって利子が少なくなります。このことから,生物資源は,ある程度まで間引いて,適正な資源水準に置くべきであることが理解できます。
 その一方で,生物資源は,環境変化や乱獲によって絶滅してしまえば,その資源は今の技術では,『ジュラシックパーク』の恐竜のようには,復活できません。生業として生物資源を利用する者が,対象とする生物資源を絶滅させてしまうようなことは,自分で自分の首を絞めるようなもので,するはずがありません。しかし,資源管理を誤って資源を適正水準より減らしても,生物資源の特性として,その後持続生産量以下で利用し続けることによって,資源を徐々に回復させることができます。そして,IWCはすでに,鯨類資源に優しく,捕鯨者には厳しい,改訂管理方式(RMP)を1992年に完成しております。捕鯨が再開した後には,資源調査によって資源の動向を十分に見守りながら,慎重に利用して,しっかりと資源を管理することが大切です。
 最近日本では,木材の価格が下落したり,山村の人口が流出したりして,人の手が加えられなくなったために,多くの地方で山林が荒れて景観を悪くしております。かつての里山のように,人間がそこに生育する種々の生物資源を上手に利用することによって,山の生態系をバランスよく維持し,美しい景観を保つことができます。それと同じように,海の生態系も,人間が積極的に働きかけることで健全に保ち,生物の生産性を高めて,人間の生存を保障することができます。
 人間が文明を発達させて,地球上に人口が増えすぎ,道路,工場,農場等の建設によって自然を破壊している以上,自然をそのままにしておくことはできなくなっています。人間が人口を減らし,文明を捨てて,原始時代の生活に戻らない限り,昔の自然を取り戻すことはできないのです。それができない現在では,人間が科学技術の力を使って,積極的,合理的に自然に関与して,地球を半自然の状態にすることによってこそ,人間と自然が共存できると私は考えます。
 次に,牛尾さんが捕鯨を基本的に認めておられるのは,私も同意見ですが,「捕鯨を日本沿岸に止めるべきである」とする主張には,賛成し兼ねます。牛尾さんの主張を読みますと,私がこの欄で最初に提起した「南極海で鯨類の調査をする必要性と新捕鯨構想」の文章が舌足らずであったために,趣旨が誤解されたのではないかと反省しております。
 日本の沿岸捕鯨を早急に再開するべきであるのは当然ですが,鯨類の生活圏は広く,日本の200カイリ内だけに鯨類が分布回遊しているわけではありません。従いまして,海洋生態系から鯨類を含む生物資源を,生態系理論に従って,満遍なく利用しなければ,海洋生態系の合理的利用に資しません。
 世界の鯨類資源の宝庫である,南極海の鯨類資源を活用して,自然の生産力を無駄にすることなく,国際管理の下で利用するべきであるとする私の主張は,山猫さん,松本さん,信天翁さん,池田さんのご意見に対する回答で,それぞれに述べておりますので,ここで繰り返すことは控えさせて頂きます。しかし,牛尾さんが心配しておられるように,「南極海の鯨類資源を一部の国が独占し,その資源のおこぼれを貧しい国に配る」ような趣旨の構想を,私が提案してはいないことは,ご理解下さい。

[ご意見:5]「現実感がない」from:池田 さん

飽食で食べ物を平気で粗末にしている現代の日本人が,飢えや食糧危機回避の為に捕鯨をすると言っても説得力が無いと思います。本当に飢えている人たちを救いたいのであれば,調査捕鯨で獲れる鯨肉を貧しい国々に援助物資として恵んであげたらどうですか。
 「世界の宝庫としての南極海の鯨類資源は,人類の共有財産として利用され,その生産物と利益は,人類の福祉の増進に大きく貢献することになろう。」とおっしゃいますが,実際に商業捕鯨が再開されたとしても母船建造が必要であり,その建造費も何億とかかり,かつまた捕獲枠の上限が決められている,このような状況下で遠洋捕鯨を行おうという民間企業など世界のどこに存在するんでしょうか。日本の調査捕鯨のように税金を使った国策以外あり得ないのでしょう。
 はっきり言って,捕鯨推進派の方たちがおっしゃることを読むと,スローガンばかりで現実感が無いと感じざるをえません。

[ご意見:5]「現実感がない」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

池田さんのご意見のように,多くの日本人が,太平の世に慣れてしまっていて,世界的には既に現実の事態となっている食糧危機をいまだに自覚していないのは,困ったことです。
 しかし,世界の人口は依然として爆発を続けており,石油の生産量がやがて底をつくのは必至であり,それに対処するためにバイオ燃料の生産の必要性が叫ばれ,その原料としてトウモロコシやダイズが使われて,人間の食料に回す部分が不足しているとか,食料や家畜用の飼料を生産するために,畑を広げて,アマゾンの熱帯雨林が急速に狭まっているとかしています。さらに,人間が作った地球温暖化によって,異常気象が発生しやすくなり,その被害によって食料の生産量が減少するなど,食料を巡る種々の深刻な事態が世界の各地で生じています。
 食料自給率が 40 パーセントを割っている日本では,最近小麦の外国からの供給量が不足し,パンやうどんの値段が上がっているなど,家庭の生活や経済をじわじわと脅かしています。日本では,殆どが輸入に頼る牛肉や豚肉は,生産国の都合によっていつ輸入が止められるか分かりません。BSE 牛肉も心配です。幸いに縄文時代から鯨食文化を築いて来た日本は,捕鯨が再開され,他の漁業も今よりさらに活発になれば,戦争直後のように,輸入に頼らずに動物タンパク質を自前で供給できます。

動物タンパク質として,ウシやブタが豊富にあるから,クジラを捕らなくてもよいと反捕鯨派からよくいわれますが,家畜を養うのに,牧場を作り,牧草を栽培したり,ムギやトウモロコシのような濃厚飼料を与えるために,山林を切り開いて農場を作ったりして,自然が急速に破壊されています。さらに,家畜による糞尿などの排泄は自然を汚染します。その上に,家畜は健康の保持のために,抗生物質を大量に投与され,その一生を人間に束縛されて不自由に生活した上で,人間に殺されます。
 これに対して,海には自然の大きな生産力があり,クジラは広い海の中で,人間に束縛されずに自由に生活し,自然に生産された餌を利用して,自然を破壊しません。捕鯨は科学的調査の上に立って計算される捕獲枠の範囲で彼らを殺すだけで,たまたまそれに当たったクジラは交通事故に会うようなものです。現に地上では自動車によって何百万頭もの多くの野生動物が事故にあって死んでいます。陸上の野生動物の場合には,無駄に殺されるだけですが,クジラの場合には殺されても人間の役に立っているのです。そして,捕鯨から生産される動物タンパク質の生産に要するカロリー量は,家畜の同量の生産に要するカロリー量よりずっと低いという計算結果もあり,捕鯨は地球の温暖化防止にも貢献し得るのです。
 1 頭 1 頭の動物が命を持っています。1 頭のクジラを殺すことによって,数十頭のウシの命が救われるのですから,倫理的にも捕鯨の方が畜産よりもずっと人道的であるといえるでしょう。

ところで,鯨類捕獲調査は調査目的の達成に必要な精度の結果を得るために算出された頭数の標本を採集するのであって,捕鯨において資源量と資源水準に従って得られる捕獲枠よりもはるかに小さい値であり,そこから生産される副産物の販売金額は,翌年の調査の費用の一部に充当されるのであって,捕鯨とは比較にならない小額のものです。私の提案は,捕獲調査よりもずっと多い頭数のクジラを捕獲する,新たな捕鯨の開始後の対応についてです。
 世界の食糧危機がさらに深刻になれば,地球の 4 分の 3 を占める海の生物生産力への期待は大きくなり,海洋生態系の頂点に立つ鯨類を持続的に利用することは必然となります。その時になれば,世界の鯨類資源の宝庫である南極海での捕鯨を再開せざるを得なくなりますから,今から捕鯨再開の必要性のスローガンを高く掲げて,その事態に,真剣に,具体的に,備えるべきであることを世界の人々に自覚して頂き,具体的な行動を起こすとするのが,私の提案です。

池田さんは高額な設備投資を要する捕鯨船団を編成してまでして,南極海で捕鯨操業する民間企業など存在しないであろうとのお考えですが,その考え方こそ,地球の将来を検討するとき,非現実的だろうと思います。現に商業捕鯨の末期でも,南極海では日本船団がクロミンククジラの加入量よりずっと以下の 1,940 頭という厳しい捕獲枠で操業して,十分に採算が取れておりました。IWC が決めた改定管理方式の下で捕鯨を再開すると,南極海で種々の鯨種の捕獲が可能となりますが,クロミンククジラだけでも,少なくとも 10,000 頭の捕獲枠が付くとの試算もあります。新たに捕鯨母船を建造するにしても,その建造費は約 100 億円ですから,ミンククジラ 1 頭が 800 万円として,1,250 頭を捕獲すれば,1 回の操業で十分に建造費を賄えます。そのように考えると,南極海の捕鯨は,民間企業にとっても,とても魅力的なものになるに違いありません。
 そのようにして,南極海捕鯨から得られる生産物とその金額は,人類の福祉に大きく貢献することになりましょう。

[ご意見:4]「根拠なき素人考えで恐縮ですが」from:信天翁 さん

最近,テレビで立て続けにニュージーランドやオーストラリアの自然保護(ホエールウォッチングなどを通して自然に親しむツアー)のあり方を知る機会がありました。ビーチによっては,観光客が貝殻を拾うどころか,小石ひとつ動かしても,処罰の対象になり得るなど,その厳格さに少々驚きました。そのような姿勢で自然の保全に取り組んでいる国々であってみれば,現状に対する自負もまた如何ばかりかと思います。
 ニュージーランドのクライストチャーチは美しい庭を持つ家の多さで有名ですが,おそらく彼らは,自然に対しても庭同然に,不断の愛情と情熱を注いでいると認識しているのではないでしょうか?

 海もまた同様で,クジラを庭に咲くバラと同じように感じているのなら,「北半球に住んでいながら南半球にまでやって来て,普段は何の手伝いもしないくせに,咲き誇るバラ園のバラを次々切り落として持って行ってしまう日本人は泥棒以外の何者でもない」と感じてしまっても,ある程度はやむを得ないかなと私は思います。

 そういう人たちを説得しようとするのであれば,いきなり「チッ,このバカが」などとは思わずに,「花を美しく咲かせるためには,美しい蝶となる芋虫も取ってやらなければならないでしょう?剪定もしなければならないでしょう?」と,相手が納得できる説明をしてあげなければならないのではないでしょうか?
 相手が守ろうとしている現状が果たして理想なのか,もっと良い状態を作り出せるのか,その辺りのことを短気にならずに話し合えないものでしょうか?

 日本は海に囲まれた国です。海からたくさんのものを得て暮らして来ました。素晴らしい水族館もたくさんあります。魚の養殖や珊瑚の繁殖にも研究を重ねています。時には相手を日本に招いて,時には相手がどんなところに心を砕いているかを知るために訪ねて行って,お互いが海をより良く保つために情熱を示せる存在であることを理解し合えれば,また違った局面が見えて来るのではないでしょうか?如何でしょう?

[ご意見:4]「根拠なき素人考えで恐縮ですが」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

心やさしいコメントを,有り難く読ませて頂きました。確かに相手(特に文化と生活の違う外国人)の気持ちを最初に理解することによって,こちらの考えを相手に理解してもらうことは大切でしょう。しかし,環境テロリスト集団であるシーシェパードの連中のように,相手がこちらの考え方を一方的に否定して,ぶん殴ってくるのを,打たれるままにして,やがて相手も理解してくれるだろうと考えることは,小生にはできません。

それはともかくとして,信天翁 さんがテレビでご覧になったとのことですが,「観光客が貝殻を拾うどころか,小石ひとつ動かしても,処罰の対象に」なるのでしたら,殖民した人が家を建て,敷地に花園を作って,そこに住むことこそ,より大きな自然破壊になるのですから,観光客を処罰する前に,自らその場を引き払うことをまず実行するべきであると思いました。

また,「北半球に住んでいながら南半球にまでやって来て,普段は何の手伝いもしないくせに,咲き誇るバラ園のバラを次々切り落として持って行ってしまう日本人は泥棒以外の何者でもない」とニュージーランドや豪州に侵入している白人種が考えているとしたら,私はそれを肯定できかねます。彼らこそ“北半球に住んでいながら,南半球にまでやってきて”,先住民を虐殺し,その土地を奪ったのですから,“泥棒以外の何者でもない”はずです。

また,この発言は恐らくクジラをバラに喩えてのことでしょうが,もしも彼らがそのようなことを本気で考えているとしたら,大変におこがましい話です。南半球の海に分布している鯨類は,ニュージーランド人や豪州人だけの所有物ではなく,地球全体の共有財産であります。鯨類は広い海洋を自由に回遊して生活しているのであって,彼らがクジラを囲って,それに餌を与えて養殖してはおりません。それに対して日本は,差し迫った地球の食糧難に対処し,南半球産鯨類の合理的利用と管理に資するために,鯨類資源をしっかりと調査して世界に貢献しているのであって,彼らに感謝されこそすれ,泥棒呼ばれされる謂われは全くないのです。

文化や習慣の違う人々が理解し合える共通言語は,科学の筈です。しっかりと科学調査を実施して,世界の人々が科学的理解を深めることによってこそ,共通の理解が得られるのです。

ニュージーランドや豪州の人々が,日本が現在進めております鯨類捕獲調査に対してやみくもに反対するだけではなく,鯨類資源について,科学に基づいて,正しい理解を持って頂くことを切望します。

[ご意見:3]「反捕鯨国が出した妥協案について」from:松本 さん

3月にロンドンで行われた IWC(国際捕鯨委員会)の中間会議で,反捕鯨国の一部から「調査捕鯨をやめさせるかわりに日本の沿岸捕鯨を認める」という提案が出されたようですが,この提案をのむきはありますか?

[ご意見:3]「反捕鯨国が出した妥協案について」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

3月に開催された IWC 中間会議へ日本から参加した代表団員にお尋ねの提案があったかどうかを確認しましたところ,会議場内でそのような発言はなかったとのことでした。それは兎に角としまして,それと類似した提案は,すでに 1990 年代にアイルランドから出されており,その時には,日本はその提案を拒否しております。いずれにしても,お尋ねの件につきましては,政治的な提案ですから,小生のような科学者が回答するべき立場にはありません。しかし,科学者としての立場から,この提案について私的な見解を述べることはできます。

最初に認識して頂きたいことは,日本が南極海と北西太平洋で現在実施している鯨類捕獲調査は,国際捕鯨取締条約第 8 条に基づいて許された鯨類資源の科学調査であって,捕鯨活動ではありません。そして,捕鯨が行われていても,科学調査は鯨類資源の持続的管理のために実施されるべきものであり,捕鯨との引き換えにはなりません。

捕鯨の対象となってきた鯨類資源は,同じ系統の資源が沿岸だけでなく,広く外洋域にも分布しておりますので,沿岸捕鯨だけでは合理的資源管理ができません。従いまして,沿岸捕鯨が再開されても,沿岸域から沖合域にわたる鯨類の資源調査は必要です。

お尋ねの提案の主目的は,南極海で日本が実施している鯨類捕獲調査活動を,反捕鯨勢力が停止させることにあると考えますが,小生がこの「鯨論・闘論」で最初に述べましたように,南極海は世界の鯨類資源の宝庫であり,世界の食糧危機が現実のものとなっている現在,南極海に分布する豊かな鯨類資源の持続的利用を図ることは地球人として必然であり,今からそれに備えておかなければなりません。そして,現在南極海の鯨類資源の動向について調査する技術的,設備的能力を有している国は,日本しかありません。日本は南極海の鯨類資源の利用と管理を請け負う国として,世界から依頼され,期待されるべきであります。

日本政府の捕鯨に対する政策の基本は,[1] 持続的開発の原則の維持,[2] 科学的事実の尊重,[3] 食糧問題に対する長期的対策,[4] 各国固有の文化伝統の尊重,である以上,政治的妥協のために,それらの大原則を踏み外して,お尋ねの提案をそのまま受け入れることはないと,私は信じます。

[ご意見:2]「勉強になりました。」from:藤田 さん

生態系に対する科学的根拠にもとづいた捕鯨が可能であるというのは正論だと思うのですが,捕鯨をよく思わない外国人からすると,日本人が自国の都合で勝手なことを言ってるように聴こえるのでしょうね。
 説得力のあるデータはないでしょうか?

[ご意見:2]「勉強になりました。」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

「鯨論・闘論」を読んで頂き,小生の意見に対するご感想とご質問を頂戴し,有難く存じました。
 捕鯨問題の解決に向けて,これまでに種々に情報や考え方,提案などを日本から発信していますが,おっしゃるとおりに,捕鯨をよく思わない外国人から見ると,日本人が自国の都合で勝手なことをいっているように聞こえるのでしょうね。

我々は捕鯨問題に関する種々のデータを蓄積しておりますが,どのようなデータでしたら説得力が生まれるとお考えでしょう。逆にお尋ねしたいと思います。それらについて,データのご示唆がございましたら,できるだけ多く揃えて,国内外に発信するようにします。どうぞよろしくご検討をお願い申し上げます。

[ご意見:1]「南極海のシロナガスクジラ資源はなぜ回復しないのか」from:山猫 さん

捕鯨ライブラリー(http://luna.pos.to/whale/jpn.html)に掲載されている「南極海のシロナガスクジラ資源はなぜ回復しないのか」を読ませていただきました。そこで質問です。

 南極海で…ミンククジラを間引かない限りシロナガスクジラの回復は保証されない。

 とありますが,どのぐらいのミンククジラを間引くと効果がありますか?また,シロナガスクジラが回復すべき適正水準とはどのぐらいでしょうか?

[ご意見:1]「南極海のシロナガスクジラ資源はなぜ回復しないのか」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

小生が 1994年に『勇魚』誌 10号に寄稿した文章を読んで頂き,有難うございます。ご質問を頂いて,14年ほど前に書いたこの文章を久し振りに読み返してみましたが,これと対比して,日本が 1987年から南極海で実施してきた JARPA ,JARPA II の調査の進展と,日本が調査船,乗組員,一部の調査員を提供して,国際捕鯨委員会(IWC)科学委員会が 1978年から継続してきた IDCR・SOWER 調査とによって,南緯 60度以南の南極海における鯨類資源についての知見と理解が,この 14年間にとても深まったことを実感しました。

この間に我々が得た知見として,

 1)シロナガスクジラ(ここで扱うシロナガスクジラは普通型 Balaenoptera musculus intermedia であり,南緯 60度以南の海域には殆ど分布しない,ピグミー型 B. m. brevicauda を除く)は,最近徐々に増加してはいるが,依然として低い資源水準にある。

 2)南極海産のかつてミンククジラと称されていた鯨種は,JARPA による研究成果のひとつとして,分類学的に独立の種として Balaenoptera bonerensis (和名:クロミンククジラ)の種名が確立した。

 3)クロミンククジラの資源は依然として高い資源水準を保っている(資源評価について,現在も IWC科学委員会での論議が続いている)。

 4)クロミンククジラはパックアイス縁の内側に形成される開氷面に侵入するので,それらの部分に分布する資源が目視調査による資源量の推定値を低くする。

 5)クロミンククジラの目視調査において,見落とし率(g(0))が,1 より低いことが明らかとなり,資源量の推定値が今までの認識よりも大きくなる可能性が出てきた。

 6)ザトウクジラとナガスクジラの資源が急速に増加し,南極海での分布域を拡大しつつある。

 7)最近クロミンククジラの胃内容量が減少しつつあり,その結果鯨体が痩せつつある。

 8)クロミンククジラの妊娠率は依然として高い水準を保っている。

 9)クロミンククジラの性成熟年齢は 1970年代まで低下の傾向があったが,それ以後はわずかながら増加の傾向がある。

 などの資源変動に関わる要素の興味ある研究結果が得られています。

そして,それらの知見は,南極海におけるヒゲクジラ類資源が互いに動的な関係にあることを,強く示唆しております。
 クロミンククジラはシロナガスクジラと生態的地位を同じくしており,南極海捕鯨によってシロナガスクジラ資源が 1920年代から急速に減少するにつれて,余ってきた餌生物を利用してクロミンククジラの栄養が良くなり,性成熟年齢が低下するなどして,繁殖力を高めて,捕鯨対象となっていなかった 1960年代までに,急速に資源量を増加させて,シロナガスクジラの生態的地位を奪ってきました。
 しかし,シロナガスクジラの捕獲が IWCによって 1964年から禁止になると,1970年代までにクロミンククジラの資源が環境収容量に達したことは,最近 VPA や生態系モデルの研究でも示されてきました。JARPA からの研究は,クロミンククジラの餌の摂取量が最近減少しつつある結果,体が痩せつつあり,1970年代まで続いた性成熟年齢の減少傾向がその後停止したことから裏付けられています。

しかしながら,依然としてクロミンククジラの資源量は南極海捕鯨が開始された時点に比して,はるかに高い水準を保っていることは確かです。その一方では,シロナガスクジラの資源水準は南極海捕鯨が開始された時代よりもはるかに低い水準に依然としてあります。つまり,現在の南極海の鯨類生態系は捕鯨の後遺症がいまだに残っている状態にあることは否定できません。
 アンバランスな文明の発達によって,世界の人口が現在のように爆発的に増え過ぎてしまった現在では,自然の生態系を,人間が全く関与しないで放置しておくことは許されません。増してや,南極海は世界の鯨類の宝庫であり,南極海を人類は積極的に利用し,“里海”として管理するべきです。

人間が変化させた自然環境は,人間によって修復させる義務があると考えます。その一環として,小生が以前から主張しているように,シロナガスクジラ資源の回復のためにも,増え過ぎているクロミンククジラを対象とする捕鯨は早急に再開するべきです。

当研究所では,1992年に IWC科学委員会が開発した改定管理方式(RMP)を用い,資源と系群に関する最近の知見に基づいて,既にクロミンククジラの捕獲限度量の試算を行っています。
 しかしながら,生態系に関する知識が増してきた現在では,RMP も,もはや鯨類資源の管理のツールとしては古くなっています。
 南極海生態系の中で,ナンキョクオキアミを鍵種とする生物は極めて多く存在しますが,少なくとも人類にとって有用生物資源と考えられる生物種を,将来どのようにバランスして利用し,管理するべきかについては,管理の基準を南極海の捕鯨が開始された時点に置くのではなく,生態系モデルの今後の開発によって,最も生産性が高く,かつ持続的な生産を生み出す基準を設定し,それに即した管理方式の算出を待つ必要があると考えます。
 そして,JARPA II では,調査目的のひとつとして,そのプロジェクトも推進しています。

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