鯨論・闘論

鯨類資源調査における致死的調査と非致死的調査

財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

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財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問国際捕鯨取締条約 第8条の下で,日本が南極海で実施している鯨類の捕獲調査を止めさせるために,最近反捕鯨勢力は,国際捕鯨委員会(IWC)の中ではもちろん,直接に非合法の海賊行為や窃盗行為までして,必死の工作を展開している。その一環として彼らは,反捕鯨科学者を動員して,“クジラの調査はすべて,殺さないでできる”とする主張を盛んに宣伝している。
 完全水生であり,立体的に生活し,巨大であり,高速で遊泳する,クジラの資源調査には,クジラの特長を生かした種々の手段がある。確かに,クジラを殺さないでできる(非致死的)調査もあるが,その一方で,目的によっては,殺さなくてはできない(致死的)調査が必要であることを,彼らは認めようとしないか,あるいは故意に隠している。
 彼らが推奨する鯨類資源の調査手段として,“目視調査”,“自然標識調査”,“衛星標識調査”,“データーロガー調査”,“音響調査”,“生体組織採集”,“糞採集”,などが挙げられている。しかしながら,それぞれの手段は,鯨類への適用が理論的には可能かもしれないけれども,実際的には,調査対象とする鯨種,調査目的,調査海域の地理的,季節的条件,適切な調査船,乗組員,調査員の用意,調査費の調達等の理由から,実行が不可能である手段が多いことを理解する必要がある。

ところで,日本が南極海と北西太平洋で現在進めている,2種の鯨類捕獲調査においては,非致死的調査をすべて排除しているのではなく,調査目的の効率的な遂行に最適な,致死的調査と非致死的調査のそれぞれの利点を組み合わせて,ともに積極的に活用して実施しているのである。
 日本の鯨類捕獲調査は,調査海域において設定した調査航路上で,調査の対象とする鯨種を発見し,これを無作為に採集することを基本にしているので,非致死的調査である“目視調査”は,捕獲調査の土台である。日本の捕獲調査において,長期に亘って得られた精密な“目視調査”の結果は,種々の鯨種の資源量の変遷や,鯨種間競合などの知見を知る上で大きな成果を挙げている。
 しかし,“目視調査”にも種々の欠点があり,鯨種ごとの分布の状態とその環境を知ることができるだけであり,“目視調査”だけで鯨体内部の生物学的組成については分からない。さらに,実際に外洋を遊泳している鯨類を発見し,鯨種と構成員数を確認するには,鯨群に接近しなければならない。それには,“目視調査”に適した構造の調査船と,調査員の長い間の訓練が必要であり,それに最も適しているのは捕鯨船であり,その船と乗組員は,捕獲調査の継続によってのみ確保できる。IWC の科学委員会の事業として高く評価されている,南極海における非致死的な IDCR/SOWER 調査も,日本政府が,捕獲調査を実施する中で訓練している優秀な捕鯨船と乗組員を毎回提供しているから実行可能であることを,しっかりと認識するべきである。

“自然標識調査”は,写真撮影などの手段を用い,ひとつの鯨種の形態や体色の特徴によって個体識別し,識別した個体を時系列的に追跡する方法である。
 しかし,この方法は,ザトウクジラのように,形態や体色の個体による特徴が顕著であり,動作が鈍く,沿岸の狭い海域に毎年来遊するか,あるいはコセミクジラのように資源量が少ない鯨種にのみ有効であり,クロミンククジラやナガスクジラのように,形態や体色に個体の特徴が見られず,敏捷に泳ぎ,生活圏が広く,しかも資源量が多い鯨種については,個体識別が困難であり,有効でないので,遊泳速度の速いクジラに接近できる捕鯨船を保有していない国では,この方法での研究成果は実際には上がっていない。
 日本の捕獲調査においても,“目視調査”の際に発見した数種のクジラに対して,“自然標識調査”を実施し,他の海域で調査している外国の科学者と共同して研究を進めて,回遊や系統群についての知見の発展に貢献している。

人工衛星を使って動物の移動を把握する標識の装着は,鯨類の回遊経路や調査できない繁殖海域などを連続的に求めるのに,理論的には有効な手段である。
 日本が実施している捕獲調査でも,この調査法の技術開発を長年試みており,この方法を用いて最近,興味ある結果が得られた。一方,非致死的調査を推奨する国のいずれも,日本が調査の対象としている鯨種について,南極海のような外洋で“衛星標識調査”を実施していないのは,彼らが衛星標識法について技術的,実際的な問題を抱えているからである。

“データーロガー調査”は,鯨類の索餌などの水中での日周期行動を把握する有効な調査手段であり,この種の非致死的調査は大いに発展するべきであると考える。残念ながら,日本が実施している捕獲調査において,この調査方法はこれまで試みられていない。
 日本でも,外国でも,ハクジラ類を対象にして,“データーロガー調査”は実用の段階にあるが,ナガスクジラ科鯨類に対しては,いまだに技術が未熟の段階にある。そして,この機器の装着には,クジラに接近できる捕鯨船のような,高速力と小回りの利く調査船が必要である。

“音響調査”は,“目視調査”と違って夜間や悪天候下の調査が可能であり,音響によるクジラの資源量の推定,音響を使ったクジラの追跡等,応用面での将来性が高く,日本が参加している SOWER 調査で基礎的な実験が進められているけれども,まだ実用化していない。

銃や,弓矢を使って,鯨体の皮膚片を採集したり,自然に剥がれ落ちた表皮を採集したりして,DNA やホルモンなどを分析する“生体組織(バイオプシー)採集法”は,反捕鯨勢力が強く推奨する非致死的調査法である。
 日本の鯨類捕獲調査においても,セミクジラやザトウクジラなどに対しては,この方法を実施しているけれども,クロミンククジラやイワシクジラなどの鯨種に対しては,応用が困難である。なぜならば,それらの鯨種は動作が敏捷であり,波が荒い外洋でバイオプシー銃を発射できるまで鯨体に接近するのが,捕鯨船でも極めて困難であるからである。
バイオプシー 1 バイオプシー 2 バイオプシー 3

“糞採集”も,最近反捕鯨勢力が非致死的調査法として,しきりに推奨している。
 しかし,この方法の欠点は,クジラの糞は正常状態でも下痢便状であり,脱糞すると糞がたちまち煙幕のように水中に広がってしまうことにある。また,常に脱糞しているわけではなく,その脱糞も必ずしも水面で行うことでもないので,1頭のクジラを長い間追跡して,何時かもわからない脱糞の機会を待つわけにもいかない。しかも,どうにか糞を採集しても,致死的方法では得られる,餌の組成や量や,捕食時間などは分からない欠点がある。

非致死的調査の更なる欠点は,日本が現在捕獲調査で実施しているのと同等な水準の資料を採集するのに必要な調査手段を整えるためには,適切な調査船と経験豊富な乗組員の確保,運航,補給などの莫大な調査費と船舶,乗組員の維持費を必要とすることである。
 しかも非致死的調査の費用は消費するだけで,致死的調査のように,物を生産して人類の福祉に貢献することはできない。さらに,“生体組織採集法”などの,非致死的調査の多くの手法を実行する際には,クジラを長時間追い掛け回すことにより,鯨体に精神的,肉体的な苦痛を与えかねず,非人道的な行為である。
 そのような理由から,現に反捕鯨国で,日本の調査に対抗して,すべて非致死的方法で日本と同じ水準の調査を実施した実績はこれまでにない。このことは,反捕鯨勢力の推奨する非致死的調査だけで実施する鯨類資源調査が,実用的でないことを具体的に示している。
 反捕鯨団体の調査妨害船がわざわざ南極海まで来て,テロ攻撃を仕掛けて調査を妨害するような,少しも科学の発展に寄与しない無駄で卑劣な行為をしないで,我々に対抗すべく,非致死的調査を実行して,少しでも成果を挙げることができたら,我々を含めて,世界の人々から評価されるであろう。
 先に開催された第60回 IWC 年次会議において,豪州政府代表委員は現行の SOWER と独立の,南極海での非致死的調査を提案したようであるが,具体的な調査計画が科学委員会に提出されておらず,そこで検討もされていないので,内容が分からないが,もしそれが単なる提案に終わらずに,実行されれば,お手並みを拝見したいものである。

申すまでもなく,我々は鯨類の調査研究における非致死的調査の重要性を十分に認識しており,日本が実施している鯨類捕獲調査は,調査を続ける中で,非致死的調査の手法の発展を進めている。そして,それは捕獲調査に伴ってのみ可能であるのに対して,非致死的調査によってだけでは,我々が調査の目的としている種類の資料,標本は実際には得られないことは確かである。
 捕獲調査によって採集した鯨体から,性,体長,体重,各部長,各部重量,生殖腺,胎児,胃内容物など,調査目的に必要な 100 項目以上の多くの種類の貴重な資料と標本を,容易に大量に測定,採集することができている。それらの殆どは非致死的調査からは得られない。その上に,条約 第8条第2項に従って,調査の後で副産物を生産し,これを政府の指令書によって販売して,食料として役立てるとともに,年間 70 億円にも達する調査費用の大部分を賄っている。

日本の鯨類捕獲調査の目標は,(1) 持続的な捕鯨の開始に必要な科学的知見を得て,科学の発展に貢献することは当然ながら,(2) 商業捕鯨のモラトリアムが実施されている中で,科学調査を進めることによって鯨類資源の調査技術と研究法を向上させ,(3) 来るべき捕鯨の再開に備えて,習得に長い時間を要する捕鯨技術を温存するばかりでなく,それを向上させ,(4) 捕鯨操業に必要な船舶,設備と人員を確保し,さらに,(5) 鯨食文化を維持,発展,普及させて,迫り来る世界の食糧危機に備える。という,大きな科学的,そして社会的役割を担っているのである。

[この記事へのご意見:11件]

[ご意見:11]「命の大切さ」from:まいこ さん

私が短大の時,クジラやイルカとアザラシについて講義を受けました。反捕鯨団体の考え方が間違ってると思います。

 ブタとウシは知能が低いから食べても大丈夫とか,クジラとイルカは知能が高いから食べるのはだめだという言い方はおかしいです。命は平等です。命をもらって食べて生きるのはとてもありがたいです。キリスト教も仏教も食べる前に感謝するのは同じです。
 それなのに,反捕鯨団体が言う言い方はブタやウシに失礼です。他の動物たちも同じです。

 映画「入り江(The Cove)」の監督が受賞スピーチで言った事を聞いて私は残念です。命をもらって食べるのはとても大切です。このメッセージを海外に伝えて下さい。

[ご意見:11]「命の大切さ」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

本欄に積極的にご意見を寄せて下さり,有難うございます。私も貴女のご意見に同感です。食事の前には「頂きます」と唱えますが,「私が生きるために,食材として犠牲になった生物の尊い命を,余すことなく,有り難く頂戴します」との意味であることは,日本人なら理解しております。
 飼育されているウシやブタに接すれば,彼らは知能が高く,心優しい動物であることが判ります。観光牧場では,広い野原でのんびりと草を食べているウシを眺めて楽しんでから,付属のレストランで牛肉のステーキを美味しく頂いております。一方で我々は,水族館でのイルカのショーを感心しながら楽しんで,彼らは知能が高く,とても可愛い動物だと思っています。しかし,これらのショーは,クジラやイルカという哺乳動物が,陸上と大きく環境の異なる水中での生活に適応するために獲得した性質を,調教師が訓練によって引き出し演出し,陸上動物である我々人間にはできないような芸に仕立てて見せてくれているものです。クジラやイルカが,反捕鯨勢力が宣伝するような,人間以上の知能を持っているわけでは決してないのです。また,知能が高い動物と低い動物とを差別するのは,かつてナチズムがユダヤ人を迫害した思想に通じて,危険です。

国土が狭く,陸上からの食料資源には乏しいですが,四面を生産性の豊かな海に囲まれた我が国では,太古から種々の海洋生物を食料として利用して生きて来ました。それらの海からの幸には,クジラやイルカも含まれ,我が国はそれらの体を余すことなく利用して,世界に誇る鯨食文化を築いてきました。
 「ウシやブタは人間が飼育しているから利用が許されるが,クジラやイルカは野生動物であるからそれが許されない」と反捕鯨側は主張しますが,これは傲慢な思想です。何の罪もないウシやブタは,家畜だからといって,生まれてからの一生を囲いの中で自由を奪われて生活し,彼らはしかも必ず人間によって殺される宿命にあります。それに引き換え,クジラやイルカは,広大な海洋で自由に生活し,運の悪い個体がたまたま交通事故にあうように,その中のごく一部がたまたま人間に捉えられるのが捕鯨です。その意味で捕鯨は自然に優しい産業です。米国や豪州では,毎年数百万頭もの野生哺乳動物が,自動車に撥ねられて無駄に死んでいます。中には,希少な種類も多数含まれています。それでも米国人や豪州人は,野生動物の保護のために,自動車に乗るのを止めようとはしません。

勿論,生き物を殺すのには,心の痛みが伴います。だから,屠殺場はどこでも決して公開しません。和歌山県の太地町は,山が迫って,食料生産に利用できる平地は殆どありませんが,海が広く開けていて,クジラやイルカを他の水産生物とともに利用する長い伝統があり,“鯨の町”といわれています。そして,ここでは住民の生業として,イルカ追い込み漁業を営んでいます。追い込んだイルカは入り江で捕獲していますが,漁業者にとって,その入り江が屠殺場なのです。
 今度アカデミー賞を取った映画“The Cove”は,住民の制止を振り切って,許可も得ずに,隠し撮りした,極めて悪質で,しかも誤りの多い映像を売り物にしています。もしも日本人が米国で屠殺場に許可なく侵入して,そこで家畜が殺される映像を隠し撮りして公開したら,どうなるでしょうか?恐らくそのような映画は公開が許されないばかりか,それを撮った日本の映画人は,西部劇のようなリンチにあうに違いありません。また,米国人は,たとえそのような映画を見ても,家畜を殺して食べるのは残忍だなどと非難することは,決してないでしょう。私は“The Cove”が賞を取ったと聞いて,アカデミー賞の権威とモラルは地に落ちたと感じました。

貴女がおっしゃるように,動物でも植物でも,生き物の“命をもらって食べる”のは,人間が動物である以上宿命です。それには,生物の特性である“増える”力を活用して,生物の種を絶やすことなく,その資源を最大限に持続的に活用し,そして“勿体ない精神”で,有り難く頂くことが大切なのです。

[ご意見:10]「(南半球の)冬場繁殖域での捕殺調査と衛星標識に関して」from:混沌さんの知り合いさん知ってる者ですさん

初めまして。[ご意見:8]の「混沌 さんの知り合い さん」と掲示板で議論している当事者です。
 その方に私の意見を都合良く切り取って紹介されてるので大隅様には「反捕鯨派の人」と誤解されてしまってますが,私は捕鯨に大賛成で,その上現行南氷洋捕殺調査の継続が最重要だと考えている者です。

 彼「混沌さんの知り合いさん」が,「南極海での調査捕鯨は科学的精度も無いし,過去商業捕鯨時代のデータが有る為調査の必要性も全く無いからやる必要は無く,本当に必要な筈の繁殖域での調査をやっていない日本の調査は唯の鯨肉取得手段でしかない。」,「そんなのはやらずに冬場の繁殖域で捕殺調査をやるべきである」などと奇妙な事を仰るので,私が,「冬場の回遊先(繁殖域)どころか回遊ルートさえ殆ど判っておらず,判明している繁殖域はグレートバリアリーフや南米・南ア等,ほぼ『反捕鯨国の領海内』に有るのに一体どうやって“捕殺調査”を実行するつもりなのか?」,「また,その場合は南半球ほぼ全域に当てずっぽうに捕鯨船団を派遣して繁殖域を見つけ出す所から始めなければならないが,その莫大な費用は何処から捻出するのか?」,「上記の条件を仮になんとかクリアできたとして,毎年全ての繁殖域で捕殺調査を行うのは範囲が広範過ぎて無理であるから最大でも隔年毎の試料採取しか出来ず,その上,反捕鯨国領海内ではそれも絶望的,という『歯抜け』のデータで IWC・SC の求める『系群構造と混合に関連する問題』をどうやって解決するのか?』と訊き,彼がその具体的な方策(調査手法と莫大な資金調達法)を全く提示できないので,「それならば現行の南極捕獲調査を継続しつつ,衛星標識等による冬場繁殖域の動向調査とバイオプシーを組み合わせる事で IWC・SC の求める知見は得られるし,君の言う『南半球全域での繁殖域捕殺調査』などより余程実現可能性が高いし有用である」という流れです。

 彼の推す「繁殖域での捕殺調査」を実行するにしても,どっちみち標識によって回遊ルートと繁殖域を特定してから行った方が遥かに安く手間も少なく済む,という事も言えると思います。

 それに加えれば,南極での捕殺調査は「今現在の鯨資源」に関する最新の知見が得られるので,過去商業捕鯨時代の古くて偏ったデータよりも資源管理に有用である,と説明しましたが,彼はそれも不要である,と。

 私の意見はあくまでも,「モラトリアムが解除される寸前までは現行南極捕獲調査を継続し,それでも足りない情報を得るなら標識やバイオプシーを使えば良い。その方が費用も少なく,反捕鯨国 EEZ 等の制約も無いので実現可能性が高い」という事です。

 さてこれを踏まえて私が大隅様に御聞きしたいのは↓

 (1) ここで紹介した彼“混沌さんの知り合いさん”の推す「繁殖域での捕殺調査」と,私の推す「南極捕殺調査と標識追跡・バイオプシー調査の組み合わせ」のどちらがより実現可能性が高いのか?

 (2) そもそも「系群構造と混交に関する問題の解決」が,今後再開される商業捕鯨・鯨類資源管理に重要であるのかどうか?

 という2点です。

 商業用とする野生生物の資源管理に関しては,「繁殖力(≒再生産能力)」の大きさの出来るだけ正確な把握が最重要じゃないかと考えていますが,そうであるならば南極捕殺での年齢構成把握等に最も重点が置かれるべきで,系統群の構造などに関する知見は「有った方がマシ」というモノではないか,と。

 この SC の要求がどれだけの切迫性を持っているのか?が,一般人には判り辛く,日本の JARPA を貶める為の「リップサービス」としてレヴューに付け加えられただけではないのだろうか?とさえ勘繰ってしまいます…
 何れにしろ私個人は「余力で出来るようならばやる」という類のものだろうと考えておりますが,如何でしょうか?

 御忙しいところ,半ば私怨絡みの決着をココに求めた様に受け止められるかもしれませんが,南極捕殺調査の重要性に関して私自身がここ 1 年ほど調べ,考えてきた事でもありますので何卒判り易い説明を宜しくお願いします。

[ご意見:10]「(南半球の)冬場繁殖域での捕殺調査と衛星標識に関して」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

長文のご質問を,興味深く読ませて頂きました。お蔭様で,捕鯨問題に関して,お仲間達が議論を戦わせて,切磋琢磨して勉強されておられることを知り,嬉しく思いました。

質問 (1) に付きましては,もしもそれが社会・経済的に可能であれば,調査対象鯨種の全分布海域で,1 年を通じて,捕獲を含む生態調査を展開するのが理想的であることは,申すまでもありません。
 しかし,大型鯨類の生活圏は広大であり,貴方が指摘しておられるように,南半球の繁殖域である低緯度海域の殆どが,多くの国の経済水域で覆われていて,捕獲調査をする海域の国の許可を得ることは,実際には極めて困難です。
 その上に,捕鯨の歴史が示すように,南半球の低緯度海域での捕鯨操業は,一部の鯨種と海域を除いて,これまでに殆どなされておりません。このことは,低緯度海域では,捕鯨の対象となる大型鯨種の分布密度が薄く,捕鯨操業には採算が合わなかったことを意味します。捕鯨場として成立するのは,餌生物の生産性が高く,鯨類が密集する海域と季節です。その海域は,かつて捕鯨場として成立していた,高緯度にあります。特に南極海は,世界の鯨類資源の宝庫であり,この海域で資源調査を実施するのが,最も必要であり,効果的です。
 そして,資源調査に基づく新しい捕鯨の開始は,迫り来る世界の食糧危機の時代における,人類の福祉に大きく貢献するでしょう。

質問 (2) にも関連しますが,捕鯨場に分布する鯨種の繁殖個体群(系群)の判別と,その混合に関する知識は,RMP の実施において基本的な要素です。系群ごとに資源を管理することは,生物資源管理の基礎です。たとえ,低緯度海域での調査によって,繁殖場が解明されても,その系群が,捕鯨場の何処に,どのように,分布するか,また,複数の系群が漁場で混合するか,混合するとすれば,どの範囲で,どの割合かを,解明する必要があります。
 1992 年に RMP が完成し,これに基づいて,IWC 事務局がクロミンククジラの捕獲限度量を計算した際に,系群の数とその分布範囲が不明であるとして,経度 10 度の狭い範囲ではひとつの系群が分布するとの,極めて安全な仮定を基に計算しました。その結果が,「南極海でクロミンククジラを年間 2,000 頭,100 年間捕獲しても,その資源に悪影響を与えない」というものでした。
 しかしながら,反捕鯨勢力が多数を占める,当時の IWC が下した,RMS(改定管理制度)が完成するまで,RMP による計算はまかりならぬという決定によって,この計算結果は没にされ,RMS も未完成のままで,未だに日の目を見ておりません。
 その後,日本が南極海で進めている鯨類捕獲調査( JARPA,JARPA II ) によって進められている調査海域(東経 35 度~西経 145 度)の範囲に,インド洋系群と太平洋系群の 2 つの系群がそれぞれ広い範囲に存在し,両者が東経 155 ~ 170 度の海域で混合しているという結果が得られました。これは,JARPA, JARPA II の成果のひとつですが,この結果を RMP に適用すると,JARPA 海域だけでも,1992 年に算出した値よりも極めて大きな捕獲限度量が計算されます。
 このように,調査に基づく系群についての正しい知識が,生物資源の合理的利用と管理に大切であることがお分かりのことと思います。

 生物資源の管理において,もうひとつ重要な生物学的基礎要素は,貴方が指摘されているように,繁殖力の大きさです。RMP の適用に当って,現在は全てのヒゲクジラ類について,MSY 1 ~ 2 パーセントとの安全な仮定に基いて捕獲限度量を計算していますが,クロミンククジラのように繁殖力の強いクジラと,シロナガスクジラのようにそれが弱い鯨種と同じ値ではないはずです。調査によって繁殖力が確定すると,より正しい捕獲限度量が自信を持って計算されます。JARPA,JARPA II で日本が進めている調査の目的のひとつも,そこにあるのです。

 繁殖力の確定も,系群の判別も,ともに RMP に基づく鯨類の資源管理において基本的な部分であり,系統群の構造に関する知見は,決して貴方が言うように「有った方がマシ」というものではありません。ですから,これまで述べてきたように,JARPA II では,クジラを捕獲することにより,多くの DNA 標本を効率的に採集するとともに,衛星標識調査や,調査対象外鯨種にはバイオプシー採集も,決して疎かにしておらず,それによる回遊経路と繁殖場の解明にも努めています。
 JARPA II には,その他にもいくつかの調査目的があり,それぞれの目的のために捕獲する必要があるのですが,今回の主題でないので,説明を割愛します。
 現在,南極海では,JARPA II に参加している調査員と船員の皆様は,悪質な海賊行為を受けながらも,粛々として調査に邁進しております。掲示板のお仲間の皆さんも,JARPA II を正しくご理解下さり,力強くご支援下さい。

[ご意見:9]「捕鯨調査」from:宮野 恵 さん

はじめまして。まずはじめに私は海もクジラも大好きです。クジラを見に行くこともあります。ありがたいことに,私の行く座間味島ではここ数年頭数がどんどん増加しています。

 周囲に外国人が多く,クジラについてよくディベートをします。私としては真実が知りたいだけで討論をする気はありませんが,なかにはこの問題についてよく知られているオーストラリアの偏ったネット上での意見だけを参考にし振り回されている人がいて一方的に攻撃してきたりします。時には,ただ日本人だと言うだけで。
 一部には私と同じように真実を知りたいと言う外国人も居ます。

 日本側の意見,反捕鯨派の意見,両者にわざと真実を隠したり勘違いする様に文章を書いたり写真を載せたり真実が非常に分かりにくくなっていると思います。

 クジラを食べる必要性は? クジラを食べるのはイヌイットだけでは無く日本人にとっても古来の文化ではないのか? イヌイットの捕鯨種に問題があるのだから他の国々が資金援助をできないのか? 反捕鯨は寄付を集めやすい? ディンゴは在来種ではないから殺してもいいのか? などなど色々な事を考えます。

 ただシンプルに思った私の 1 番の疑問は,捕鯨するしないにかかわらず,

 クジラを殺して何をそんなに調べているのか?

 他の動物や海洋生物は同じように調査の為に尽力したり長期にわたって国際問題に発展するリスクを負っているようには思えません。ただ食べたいから捕らせろと言いにくいからなのでしょうか? 捕鯨問題とエコは,やはりプロパガンダではないのか?

 どなたか納得のいく答えを教えてください。

[ご意見:9]「捕鯨調査」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

宮野さんが捕鯨問題にご関心を持っておられ,外国の友達とのデイベートを通じて,いろいろとお考えになっておられることを,捕鯨関係者として,とてもありがたく思います。

捕鯨問題は,自然科学だけでなく,社会科学,人文科学,等の種々の分野に広く関係しますから,大変複雑な課題です。しかし,クジラの生物学とクジラ資源の現状についての正しい知識を持った上で,捕鯨について考えることが大切です。捕鯨問題を話し合うための,世界の共通言語は科学だからです。倫理や宗教を基準にすると,なかなか合意は得られません。

捕鯨問題に付きましては,この「鯨論・闘論」欄で,水産庁の森下丈二 参事官が詳細に説明され,それを基にして,これまでに読者との間で 70 回以上もの興味あるデイベートが行われておりますので,是非それらの記事をお読み下さい。それによって,宮野さんの疑問点の多くが解消されるでしょう。

宮野さんのご質問の,「クジラを殺して何をそんなに調べているのか?」についても,私の「鯨論・闘論」欄での 2 回の記事と,それらについての読者との間のデイベートで説明してきた心算ですが,私の舌足らずで,ご理解頂けないことを反省します。
 ごく最近,私は新潟大学の三浦 淳 先生が著わされた『鯨とイルカの文化政治学』(洋泉社/ 2009 年 12 月出版)を読んで,深い感銘を受けました。この本は捕鯨問題を思想の面から考える上で,とても勉強になる好著であると思いますので,是非多くの人に読んで頂きたいと,強く推薦します。

[ご意見:8]「衛星標識調査について」from:混沌 さんの知り合い さん

クロミンククジラの衛星標識調査について,掲示板で議論している者です。対論者は,南極海調査捕鯨時の衛星標識調査について,
 
「センサによる鯨の生態調査 」
http://www.natureinterface.com/j/ni02/P038-041/

 を参照先として

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追跡用の標識なら電波発信機能だけで済むからデリケートな扱いは要らない。
心臓狙いの捕殺と違って打ち込み箇所は鯨体の何処でも可能。
つまり捕鯨砲での捕殺なんかよりもマトは遥かに大きい,という事です。
何%か外れたって数打ちゃいいんで捕鯨砲での捕殺よりも条件が狭められる,なんてあり得ません♪
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 と主張し,数千頭の衛星標識調査が捕獲調査よりも簡単にできるよう主張しています。

 普通なら,常識であれば有り得ない妄言と片付けて終りにするところですが,ここで実際に参画された生の見解をご頂戴いただければ,衛星標識調査の現実について改めて知ることもできると思い投稿いたします。
 宜しければ,捕鯨砲による捕殺と衛星標識打ち込みの難易の違い,長期追跡( 1 年程度)運用の技術目処,大規模調査の費用想定などお教えください。

[ご意見:8]「衛星標識調査について」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

鯨類捕獲調査に反対する側のひとつの主張に対して,貴方が反論して下さる材料の一部を,このコメントで提供することを,嬉しく思います。

ご承知のように,野生生物の野外生態調査は,種々の方法によって実施されております。その時に,ひとつの調査手段を選択するにあたりましては,当然ながら,
 (1) 調査目的と期待する成果
 (2) 調査対象生物の性質
 (3) 調査の場の環境
 (4) 調査方法の性質
 (5) 調査員とその補助員の技術と人数
 (6) 調査に使える時間
 (7) 調査費
などを考慮しなければなりません。そして,調査を成功するための最善の手段を決めるわけです。

今回貴方が取り上げた“衛星標識調査”について,以上の考慮点を考えてみましょう。

先ず (1) の調査目的は,鯨類の分布,移動,そして系群を把握することであります。これらの情報は,致死的調査でも得られます。それはともかくとして,衛星標識法は,鯨類を捕獲しないで,標識個体の移動が逐次,リアルタイムで,把握できる利点があります。
 一方,1930 年代から 1970 年代にかけては,この目的には,“標識銛”を鯨体内に打ち込む調査が最も実用的でした。その上に,(4) の調査方法の性質に関連しましては,標識銛法は,鯨類の長期間の移動を知る他に,年齢や成長,資源量などが得られる,多くの利点も兼ね備えておりました。しかしこの方法は,標識銛の回収に捕獲を伴いますので,1980年代から反捕鯨側の攻撃に会い,商業捕鯨のモラトリアムが実施されてからは,生態調査に使えなくなりました。
 衛星標識法は技術開発中であり,鯨種によって異なりますが,ヒゲクジラ類では,未だにせいぜい数ヶ月の短期間の資料しか得られない欠点があります。

(2) の調査対象生物の性質に関しまして,陸上動物や,追い込み漁法で捕獲できる小型鯨類では,対象個体を捕獲して,標識機器を装着して放す手段を利用して,有効な部位に着実に機器を装着することができます。
 しかしながら,大型鯨類は,外洋の水中を高速で遊泳し,呼吸のために瞬時にしか水面に浮上しません。陸上の大型哺乳類では,銃や吹き矢で麻酔薬を動物に注射して不動化し,麻酔から覚めるまでに衛星標識機器を装着する方法が取れますが,鯨類は呼吸機能が随意筋によって支配されますから,麻酔すると呼吸が停止して,溺死するために,麻酔による不動化の方法が利用できません。遊泳する大型鯨類に衛星標識を装着するには,クジラが水面に浮上する瞬間に,至近距離から標識を発射するしかないのです。

(3) の調査の場の環境に付きましては,鯨類,特に大型鯨類は,外洋で高速で立体的に遊泳して生活しておりますから,陸上のように,調査員が歩いて,待ち伏せして,対象動物に接近したり,罠を仕掛けたりして捕獲する,余り費用が掛からない方法が取れず,高速で外洋を航海できる調査船を必要とします。しかも,海には風,波,うねりがあり,瞬時しか水面に浮上しない鯨類に接近して,鯨体の適切な部分に,的を絞って機器を装着するのは,実際には非常に困難な作業です。

(4) の調査方法の性質に付きましては,衛星標識の発信装置と電池を含む機器本体,装着法,機器発射装置,鯨体への接近方法などの技術開発があります。
 衛星標識法はバイオプシー(生体組織)採集法に比して,格段の困難性が伴います。後者は鯨体の何処に採集用具が命中しても,標本が採集できますが,衛星標識の場合には,装着の際の機器に与えるショックが少なく,標識ができるだけ長い間しっかりと鯨体に付いており,長い間電波を発信する容量の電池を持たなければなりません。しかも電波を発信するには,浮上した時にアンテナが水面から露出すようにしなければなりません。それ故に,衛星標識機器の装着は,捕鯨砲による捕殺よりもずっと困難であることが理解されます。
 機器の装着には,船やヘリコプターでクジラに接近し,竿,石弓,銃などを用いて機器を射入する方法が取られますが,財団法人 日本鯨類研究所は,独自の衛星標識機器と,“ICR gun”と称する空気銃を開発しております。機器の装着に成功するためには,できるだけ鯨体に接近することが必要ですが,外洋では,ゾデイャックなどのボートを使用するのは危険でして,高速で,小回りが利き,クジラへの接近法に習熟している乗組員が乗船する,捕鯨船が最適です。

(5) の調査員とその補助員の技術と人数に付きましても,海上での調査には,適切な調査船とクジラに接近する経験のある乗組員,調査員を必要とします。
 現在は鯨類捕獲調査事業が継続していますので,性能のよい捕鯨船と優秀な乗組員を確保していますが,もしも捕鯨が再開できなければ,外洋での大型鯨類を対象にした,効率のよい衛星標識調査は極めて難しくなります。

(6) の調査に使える時間に関しては,目的とする鯨種,個体の発見から,追尾,装着の成功まで,多くの時間を要します。
 しかし,ごく沿岸域ならともかく,はるか外洋まで船を出して,衛星標識の装着を唯一の目的にした調査を組織することは実際には困難であり,他に多くの調査があり,その一部として標識装着に与えられる時間は限られています。

(7) の調査費については,調査期間と調査海域による調査船の運行費,乗組員,調査員の給料,衛星標識装置,発射装置の開発費,消耗品である高価な衛星標識機器の費用などがあり,もし衛星標識研究のみを目的にすれば,調査費全体の費用は莫大なものになります。特に衛星標識発信機は,技術開発が進んだ現在でも,1 基が数十万円の価格であり,後述のように,1 基の機器の装着を成功させるには,数個の機器の喪失(海没)を伴います。

以上に紹介しましたことから分かるように,貴方が紹介した,反捕鯨の人は,鯨類衛星標識調査について,全く無理解であることは明らかです。

このように検討してきますと,衛星標識調査ひとつをとっても,鯨類資源調査は実施が大変に難しく,高額の費用を必要とすることが理解されると思います。日本が現在南極海と北西太平洋で進めている鯨類捕獲調査は,種々の目的があり,それぞれについて,約 100 種の調査項目を立てて,それらに適切な調査手段を選択して,実施しております。
 これらの調査の中で,我々は衛星標識調査も調査項目のひとつとしており,衛星標識機器,その発射手段を含めて,1990 年から独自の技術開発を進めており,すでにいくつかの貴重な結果を得ております。
 因みに,手元にある,当研究所が北西太平洋で,2004,2006,2008 年の 3 年間に,ニタリクジラを対象にして行った衛星標識実験の具体例を紹介しますと,標識装着試験を 21 回実施し,そのうちで,18 発の衛星標識機器を発射し,その中の 7 発( 39 パーセント)が命中し,2 発が命中しても跳ね返り,9 発が不命中でした。そして,命中した 2 発( 29 パーセント)が電波を発信して装着に成功し,本種の移動に関する貴重な資料を得ました。そして,その結果は昨年の IWC の科学委員会に報告され(提出文書:SC/61/O7),高く評価されました。

ご質問の,捕鯨砲と衛星標識の打ち込みの難易を,同じニタリクジラの資料で比較しますと,捕鯨砲の場合,命中率は 80 パーセント以上であり,捕鯨砲による捕殺の方が衛星標識の装着に比して,ずっと効率がよいことが理解されます。
 貴方のご質問の,「大規模調査」の意味を私が誤解しているかもしれませんが,もしも捕鯨船型の調査船 1 隻を,船員 20 名を含んで(クジラの発見には,捕鯨船の乗組員が必要です)傭船し,調査員 3 名が乗り組んで,北西太平洋海域の衛星標識調査を 2 ヶ月間実施し,その間に 100 個の衛星標識を消費するとすれば,傭船料,燃料代,船員給料,調査員給料,衛星標識機器代金,その他雑費を含めて,かなりの高額になるでしょう。
 日本が実施している鯨類捕獲調査の場合には,国際捕鯨取締条約に定める条項に従って,調査副産物を販売して,調査費用の大部分を賄っていますから,政府の補助金と合わせて,大規模の調査ができるのです。
 今年の 2 月に,南極海で,ニュージーランドとオーストラリアの合同で,南極海で非致死的方法だけによる鯨類資源調査が予定されているようですが,彼らの調査費,調査の内容と結果などを,早く知りたいものです。

長期追跡に付きましては,すでにマッコウクジラで 1 年近い記録がありますが,ヒゲクジラではまだ最長で数ヶ月に止まっています。しかし,発信の回数とエネルギー消費を節約することによって,すでに 20 ヶ月の寿命を持つ衛星標識機器が開発されているようですから,衛星標識による 1 年以上の追跡も夢ではないでしょう。しかし,それを可能にする機器の装着法の開発はまだ十分ではありません。

致死的調査と非致死的調査をうまく組み合わせて進めている,日本の鯨類捕獲調査をさらに前進するためにも,衛星標識法の急速な進歩を期待します。

[ご意見:7]「捕獲調査の量の根拠について」from:ミコヤンカ さん

基本的に調査捕鯨のスタンスを支持している者です。
 科学調査のみが目的であれば,年間 1,000 頭に上る捕獲は必要ないのではないか?
 という意見があり,これに対する明確な回答は,なされていないような気がするのですが…。どこかで説明されているなら,見落としで申し訳ありません。

 ただ調査捕鯨の目的の中に,来る商業捕鯨再開に向けた技術的トレーニングの意味があるということであれば,捕鯨基地の地域経済を支える意味で,それくらいの量は必要という意味は分かりやすいものです。
 その点がしかし,日本が行っている調査捕鯨は,実際は商業捕鯨だ,と批判される点でもあろうと思います。

 科学調査のためにそれだけの量が毎年必要だという説明をするのなら,例えば DNA 組成の系統群の判別には最低同一種でこれだけを捕獲する必要があり,それらを積算するとこういう数字になる,といった言い方があるのかなと思います。
 今は一般人でも科学の知識は豊富なので,知らせないよりは知らせて理解を得たほうが,支持を得やすいと思います。

 以上,長くなりましたが,要旨は,捕獲調査の量の根拠をお教えいただきたいということです。よろしくお願いします。

[ご意見:7]「捕獲調査の量の根拠について」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

調査捕鯨をご支持下さり,有り難く存じます。
 ご承知のように,当研究所は,日本政府の委託を受けて,南極海と北西太平洋において,鯨類捕獲調査を継続して実施しておりますが,調査対象種のそれぞれの採集標本数の算出基礎につきましては,調査の開始に当たりまして IWC 科学委員会に提出した,それぞれの調査計画書に明記してあります。しかし,ご指摘の通り,それに関する一般の方々への説明努力が不十分であったことは,反省します。

日本が進めている鯨類捕獲調査は,先ず調査目的を定め,次に,それに必要な調査鯨種,調査海域,調査期間を定め,採集する鯨種と標本数は,調査の目的と,調査方法,調査海域,調査期間と,調査から期待する結果の精度によって,算定されます。
 そして,採集しようとする鯨種の資源水準が健全であることと,計算された採集標本数が資源に悪影響を与えないことを確認してから,計画書を作成して,IWC の規則に従って,IWC 科学委員会に提出します。そこで計画書に対する委員の方々のコメントを受け,修正するべき点は修正して,調査が実行されます。また,調査の途中,または終了後に,IWC 科学委員会によって調査レビュー会議が開催されて,調査の批判を受ける仕組みになっています。
 最近では,捕獲調査計画の開始と,中間または終了時に,IWC 科学委員会の委員以外の科学者の参加による,中立的な調査レビュー会議を持つことになり,今年の 1 月には,日本が北西太平洋において実施している鯨類捕獲調査(JARPN II)の 6 年に 1 度のレビュー会議が,この新制度の下で初めて開催され,幸いにして,参加した委員によって好評を頂きました。

ここでは,ミコヤンカさんがご関心のある,南極海の鯨類捕獲調査(JARPA II) を例に取りまして,ご理解を頂くために,鯨類捕獲調査の標本数の決定の過程と根拠を以下に記します。

1987 / 88 年から 2004 / 05 年の間に,日本によってクロミンククジラを対象にして実施されました第 1 期の JARPA によって,調査海域においてナガスクジラとザトウクジラの資源の増加が著しく,それに伴ってクロミンククジラの資源構造や生態の状況が変化しつつあり,世界の環境変化も鯨類資源に影響を与えている可能性が理解されました。
 このような結果から,主要鯨種の資源の変化に伴う,生物学的特性の変化と,南極海の環境変化を組織的に追跡し,単一資源対象の RMP でなく,生態系を踏まえた鯨類資源の管理方式を作る必要性が痛感されました。

そこで,その翌年から開始を予定された JARPA II では,次の 4 つの目的を設定しました:

1.南極海の生態系の追跡

2.鯨種間の競合と将来の鯨類資源管理目的に関するモデリング

3.系群構造の時空間的変化の説明

4.クロミンククジラ資源の管理方式の改善

そして,これらの目的を達成するためには,資源量が最大のクロミンククジラとともに,近年資源増加が著しく,南極海洋生態系の大きな構成要素を占めるようになった,ザトウクジラとナガスクジラを採集して,資源の構造の変化を調べる必要性があることが決定され,調査海域として,JARPA と同じ 135 度 E-145 度 W の海域を設定し,2 年間の予備調査を経て,本調査を開始し,6 年毎に調査を見直すことにしました。
 そして,調査は致死的方法と非致死的方法の優れた点を組み合わせて実施することにしました。

採集標本数に付きましては,

1.クロミンククジラ:

 1)性成熟年齢:この鯨種につきましては,資源増加に伴う性成熟年齢の現象が見られましたが,近年それが下げ止まりの傾向が見られるようになりました。性成熟年齢の変化を年あたり 0.1 歳の変化を見出すためには,1,288 頭を捕獲するべき計算になります。

 2)妊娠率:資源変化をもたらす,この生物学的特性値の年率 1.0 ~ 1.5 パーセントの変化を検出するには 663 ~ 1,617 頭を採集しなければならない計算になります。

 3)脂皮の厚さの変化:環境変化と餌の捕食量の変化の指標となる,脂皮の厚さの年率 10 パーセントの変化を検出するには,864 頭の資料が必要です。

 4)系群の混合:海区 5 W において,この鯨種の太平洋系群とインド洋系群の混合率を検出するためには,この海域だけで 300 頭採集する必要があり,それには全体で900 頭採集する必要があります。

 5) それらの結果を総合して,850 頭 プラスマイナス 10 パーセントと決定しました。

2.ザトウクジラ:

この鯨種については,資源の回復に伴う,妊娠率と性成熟年齢の変化に最も関心が寄せられました。
 そして,予備的な結果を得るためには,妊娠率の年変化を過去の結果を参照して 1.5 ~ 3 パーセントとして,41 ~ 181 頭を採集する必要があり,性成熟年齢の年変化を 0.1 歳として,131 頭を必要とします。
 このような検討から,予防的な数字として,50 頭を標本とすることにしました。

3.ナガスクジラ:

過去の経験から,妊娠率が年に 2 - 2.5 パーセントずつ変化すると想定して,55 ~ 107 頭の標本を採集することになります。性成熟年齢を仮に 0.1 歳変化するとすると,必要標本数は 131 頭と計算されます。また,DNA 解析には少なくとも 20 ~ 50 頭の標本を採集することが勧告されています。
 このような検討から,この鯨種に対しては,標本数を 50 頭と決定しました。
 なお,ザトウクジラに付きましては,日本政府は IWC の正常化交渉が進められている期間中は,ザトウクジラの標本採集を自粛すると決めていることは,ご承知のことと思います。

調査と標本数の算出の根拠につきましては,日本政府が 2005 年の第 57 回 IWC 科学委員会に提出した,「Plan for the Second Phase of the Japanese Whale Research Program under Special Permit in the Antarctic (JARPA II)-Monitoring of the Antarctic Ecosystem and Development of New Management Objectives for Whale Resources」(SC / 57 / 01:99pp.) に,詳細な説明があります。

上記文書(英文)をお読みいただくには,こちらをクリック

また,日本語訳をお読みいただくには,こちらをクリック

日本が進めております鯨類捕獲調査は,あくまでも国際捕鯨取締条約第 8 条に基く科学調査であって,反捕鯨団体が非難するような,擬似商業捕鯨では,決してありません。 それだけに反捕鯨団体の,暴力的で,卑劣な行為には,強い怒りを持ちます。
 日本の鯨類捕獲調査の目的は,人類の福祉に貢献する,新たな持続的捕鯨の創造のための,科学的基礎を築く所にあります。そして,捕獲調査は,ミコヤンカさんがご理解下さっておられますように,捕鯨の再開に当っての,捕鯨技術の継承,捕鯨設備の継承,そして,クジラ食文化の継承にも貢献しております。
 そのようなことを一般の方もご理解を下さって,日本が進めております鯨類捕獲調査に,一層のご支援をよろしくお願い申し上げます。

[ご意見:6]「鯨研通信 438 号の藤瀬氏の発言について」from:Zちゃんねらー さん

まず,この記事と関係ないことについてお尋ねすることをお詫びします。

 私は賛助会に入会しておらず,『鯨研通信』を読むためだけに東京まで行くというのも面倒なので確認していないのですが,反捕鯨系ブログにおいて議論中に『鯨研通信 438 号』の藤瀬良弘 氏による JARPA/IWC レビューの中で「もうすぐ SOWER 3 周目の科学委員会による合意が得られる」と書かれていると目にしました。

 藤瀬氏が執筆に参加した論文(http://kokushi.job.affrc.go.jp/H19/H19/H19_49.pdf)において,「 2008 年の科学委員会において合意が得られる」とあります。
 藤瀬氏が鯨研通信で「もうすぐ合意が得られる」とした根拠がそれなら,2008 年の科学委員会は終わってしまったので,結局ミンククジラの頭数が激減したとされる 3 周目の合意が得られる予定はないということになりますよね。

 拙い文章で申し訳ございませんが,藤瀬氏が『鯨研通信』で「SOWER 3 周目の合意が科学委員会で得られる」とされた根拠は,2008 年の科学委員会なのでしょうか?

[ご意見:6]「鯨研通信 438 号の藤瀬氏の発言について」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

Zちゃんねらー さん,ご質問ありがとうございます。私宛に寄せられたご質問ではございますが,おっしゃるように私の論に関することではありませんでしたので,鯨ポータル・サイト編集室から回答いただこうと思います。どうぞご了承ください。(大隅清治)


 大隅 顧問に代わって,鯨ポータル・サイト編集室が回答させていただきます。

まず,

 > 鯨研通信 438 号』の藤瀬良弘 氏による JARPA/IWC レビューの中で「もうすぐ SOWER 3 周目の科学委員会による合意が得られる」と書かれていると目にしました。

とのことですが,『鯨研通信 438 号』を確認しましたところ,藤瀬 氏の論文中にそのような文章はありませんでした。

もしも,ご入用でしたら,送料はご負担していただくことになりますが,該当部分のコピー送らせていただきますので,お届け先などの情報を,鯨ポータル・サイト編集室までメールにてご連絡ください。
 e-mailアドレスは,kujira★e-kujira.or.jp(★を@に置き換えてください)。件名には「鯨研通信 438 号の件」と明記ください。なお,誠に申し訳ありませんが,この対応はコメント掲載後 1 ヶ月間のみとさせていただきます。ご了承ください。

さて,

 > 藤瀬氏が執筆に参加した論文(http://kokushi.job.affrc.go.jp/H19/H19/H19_49.pdf)において,「 2008年の科学委員会において合意が得られる」とあります。

に関してですが,2008 年の第 60 回 IWC の年次会合の議長報告要約が IWC の HP に掲載されております。

 『Chair’s Summary Report of the 60th Annual Meeting, Santiago, Chile, June 2008』
 (英文のみ。こちらをクリックしていただくと,PDFファイルが開きます

この要約中「1.STATUS OF STOCKS,  Antarctic minke whales」を見ると,来年の合意に向けて詳細の計画や中間会合を計画中であるとの記述があります。

もう少し詳しいものでは第 60 回 科学委員会のレポートがあります。
英文のみ。こちらをクリックしていただくと,PDFファイルが開きます

このレポートの 29 ページ「10. Whale Stocks, Antarctic minke whales」に関係する記述があります。

いずれも日本語訳がなく申し訳ないのですが,ご参考にしてみてください。

[ご意見:5]「調査について」from:混沌 さん

前回の回答,大変参考になりました。ありがとうございます。
 今回は某掲示板において,

 「調査捕鯨なんか何千頭やろうが資源管理にはならん。資源管理に供することが目的で資源情報を得るための調査捕鯨なら,南氷洋の夏だけの調査じゃあ穴だらけの情報だよ。」

 「資源(捕鯨対象)の増減傾向は南氷洋だけでも分かるが,これは捕獲がなくてもわかる。後は南氷洋だけではわからん。極端な話,繁殖集団は同じでも南氷洋まで来ないクジラがいるとしたらどうなる?南氷洋だけで調査していて何がわかるかい?」

 という意見を目にしました。そこで質問としては,

 1:繁殖期の調査はしているのか。

 2:“1”の調査は南極海における鯨類の資源管理に必要性はあるのか。

 3:調査対象の鯨類のうち,同一系群であって,索餌期,南極海に来ず別海域にてすごすグループ(亜系群と呼べばいいのでしょうか)を持つ鯨類はいるのか。

 以上 3 点ということになるでしょうか。よろしくお願いします。

[ご意見:5]「調査について」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

個人的には何を考えようとも自由かもしれませんが,私的な掲示板であっても,考え方を公に発信するのですから,その発信者はそれを読む人に対して責任を持たなければなりません。その意味で,混沌さんがお読みになったという某掲示板の発信者は,日本が進めている鯨類調査捕鯨の目的と方法を十分に理解しないで,根拠もなしに捕獲調査を誹謗する記事を書いておられるようですので,無責任であると私には思われます。

それでは,その掲示板の内容に疑問を抱かれた,混沌さんのご質問に対しまして,以下にお答えします。

1:繁殖期の調査はしているのか・・・
 日本が捕獲調査の対象としている鯨種は,広い範囲を季節的に回遊し,低緯度の冬季における繁殖場,繁殖期と,高緯度の夏季を中心とした索餌場と索餌期が大きく離れていることは確かです。しかしながら,捕獲調査は対象鯨種について全季節,全海域において調査しないと完全でないとお考えでしたら,それは間違いです。日本はご承知のように,南極海と北西太平洋で第 2 期の鯨類捕獲調査(JARPA II と JARPN II )を進めておりますが,それぞれの調査にはそれぞれの目的と方法があり,それらは南極海と北西太平洋とで異なります。それらの調査目的の遂行のためには,繁殖期,繁殖場での調査の必要はありませんので,それらの調査をしてはいません。
 しかし,JARPA,JARPA II の調査海域への往復の途中の低緯度海域で鯨類の目視調査を実施しております。また,衛星標識の技術を高めて,調査域の内外での対象鯨種の移動,回遊の実態を求める努力を進めています。それらの調査によって,やがて鯨類の繁殖場と繁殖期についても,よりよい理解ができるようになると期待しております。

2:“1”の調査は南極海における鯨類の資源管理に必要性はあるのか・・・
 鯨類資源学において,繁殖期,繁殖場での調査の主な目的は,鯨類資源の管理の基礎である「系群」の存在を確認することにあります。しかし,再開されるべき持続捕鯨は,繁殖場を漁場とすることを考えておりませんので,繁殖場や繁殖期に関する知識は,学問的には意義があっても,実用的ではありません。日本が捕獲調査の対象としている鯨種は季節的に南北回遊し,索餌場である南極海の索餌期に濃密に分布するのですから,漁場となる南極海にそれぞれの系群がどのように分布し,それらがどのように混合しているかを知ることが大切であり,それが解明されれば,捕鯨に対して資源を合理的に管理できるので,これに調査の努力を払っております。
 因みに,国際捕鯨委員会の科学委員会が,国際共同調査として,1978 年から実施しております鯨類資源調査においても,調査海域を索餌期の南極海に限定しておりますのは,鯨類資源が集中する南極海における調査が鯨類の資源調査に必要であり,繁殖期にクジラが分散している繁殖場でそれを実施していないのは,IWC 科学委員会が鯨類の資源管理に直接的な必要性を繁殖場での調査に認識していない証拠です。

3:調査対象の鯨類のうち,同一系群であって,索餌期に南極海に来ず,別海域で過ごすグループを持つ鯨類はいるのか・・・
 ピグミーシロナガスクジラは南極海に分布するシロナガスクジラの亜種とされ,南極海に来遊しません。しかし,ピグミーシロナガスクジラはシロナガスクジラの同一系群の中の亜系群ではありません。また,マッコウクジラでは,同一系群であっても,雌とそれに養育されている子供の群れは,南極海に分布しません。しかし,それらは亜系群ではなく,棲み分けであり,マッコウクジラは JARPA II の調査対象ではありません。
 南極海で日本が現在捕獲調査の対象としている鯨種は,クロミンククジラ,ナガスクジラ,ザトウクジラの 3 種です。それらには,南極海に来遊しない亜系群は存在しないと考えられております。しかし,クロミンククジラは性によって棲み分けの現象が見られ,雄は雌よりも低い緯度に比較的多く分布しますが,これは亜系群の存在を意味しません。また,クロミンククジラの親子は南極海に分布せず,離乳後に親も子も南極海に来遊します。このような生態的知見が得られたのも,捕獲調査によって南極海を北部まで広く調査してきたからであり,捕獲調査の成果のひとつです。
 ついでに申しますと,クロミンククジラの索餌期の調査海域に 2 つの系群(インド洋系群と太平洋系群)が分布し,その 2 つの系群が東経 155 度から 165 度の付近で混合して分布することが分かったのも,日本の鯨類捕獲調査の大きな成果であり,繁殖場での調査を必要としませんでした。そして,この結果は捕鯨の再開に当たっての合理的資源管理に大きく貢献します。
 また,たとえ同一系群に南極海に来遊しない亜系群が存在していて,その存在が分かっていなくても,それらの亜系群は捕鯨によって利用されないことになりますから,資源管理にプラスに貢献することがあっても,マイナスには決してなりません。

混沌さんが鯨類問題について関心をお持ちになり,「鯨論・闘論」に積極的に参加しておられるのを,嬉しく思います。これからも疑問やご意見があれば,何なりと「鯨論・闘論」欄にお寄せ下さい。

[ご意見:4]「鯨肉が好きですが…」from:サトコ さん

鯨類の調査には,年間 70 億円も掛かっているのですか。だから,調査費を賄うための鯨肉は高価なのでしょうか。
 私は鯨肉が好きですが,高価なのでなかなか手が出ません。昔から日本人は鯨肉を食べていたと聞いているので,日本人の口に合わないことはないと思います。今よりもう少し安くなったら,現代人にとってもっと親しみやすい食材になると思うのですが。
 そして,日本国民が鯨肉を多く消費するようになれば,鯨肉が日本人に不可欠な食材として広く認知され,捕鯨調査に対する風当たりも弱くなりはしないでしょうか。まったくもって素人の考えですが…。

 反捕鯨組織の危険な妨害行為には,ニュースやネット動画を見るたびにハラハラしています。乗組員,関係者の方々の無事を願うばかりです。

[ご意見:4]「鯨肉が好きですが…」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

ご指摘のように,鯨肉の値段は高いとよく言われます。それでも,ブランド牛肉やクロマグロのトロに比べれば,ずっと安いですよ。

それはともかくとして,調査副産物の販売を行っているので,反捕鯨側から“調査捕鯨は擬似商業捕鯨だ”という非難の声をよく聞きますが,日本が実施している鯨類の捕獲調査は,商業捕鯨とは基本的に異なります。捕獲調査が目指すものは,商業捕鯨と違って,会社の発展のために捕鯨から利益を追求するのではなく,捕鯨の再開に向けて鯨類資源の実態を追究する所にあります。
 商業捕鯨では,クジラが沢山いる時期と場所で捕獲を集中して,捕獲割当量の範囲で,できるだけ大きいクジラを選んで,効率よく捕獲して,コストを抑え,生産物の価格をできるだけ低くする方法で企業努力して,経営します。それに対しまして,捕獲調査は,広い調査海域と長い調査時季の全体に分布するクジラから,無作為に標本を採集し,時間を掛けてしっかりと調査研究する方法で行われますから,効率が悪い上に,採集標本数も調査目的を達成するのに最小限の数に限られます。そのために,捕獲調査は生産量に比して高額のコストを必要とし,そのコストを,国際捕鯨取締条約の規定に従って,少ない調査副産物の売り上げで賄うのを基本にしておりますので,鯨肉の値段が商業捕鯨よりも高価にならざるを得ません。

日本政府は,国家的事業である鯨類捕獲調査を推進するために,国民の税金の中から補助金を支出して下さっておりますが,調査に必要な全てのコストをこれで賄うことは許されません。鯨類捕獲調査が発展する中で,副産物の生産量が増加するにつれて,これまで鯨肉の価格は徐々に下げられてきており,その結果最近では大衆酒場でも鯨肉料理がメニューに載るようになって来てはおりますが,まだまだ価格が高いのは,関係者として心苦しく思っています。捕鯨が復活すれば,皆様に鯨肉が安く,大量に提供できるようになりましょう。

日本が世界に誇る鯨食文化を守り,発展させる運動として,当研究所では,朝日学生新聞のご協力を得て,全国の小・中学校で総合学習の一環として,クジラについて学習した後,給食の食材として,鯨類捕獲調査の副産物である鯨肉を提供して,児童・生徒に食べて頂く運動を数年来展開しており,好評を得ております。

サトコさんが悪質な反捕鯨団体の南極海における鯨類捕獲調査に対する妨害行為をご心配下さっておられると知り,鯨類捕獲調査を推進する研究機関に勤める者として,とても有り難く思い,大変励みになります。
 反捕鯨団体の卑劣な海賊的行為や盗賊行為を止めさせるために,お力を貸して下さい。それには,多少高くても,高蛋白,低脂肪,低カロリーの鯨肉を買って頂いて,沢山召し上がって下さい。それが鯨類捕獲調査の一層のご支援に繋がります。

[ご意見:3]「真に科学的な姿勢」from:ruu さん

失礼いたします。

 IWC 科学委員会のレビューの中での JARPA の成果について,いくつかの希望的結論もありつつも全体としてはデータに大きな疑念が得られていることは大変残念です。
 例えば,
 "Report of the Intersessional Workshop to Review Data and Results from Special Permit Research on Minke Whales in the Antarctic, Tokyo 4-8 December 2006"
 内の
 "8.1 Contribution to minke whale management"
 にて,
 「RMP による管理には JAPRA は必要ないが・・・」等の下りは,RMS 作成が最終目標とはいえ過去 20 年の JAPRA の活動意義自体に疑問を呈するものではないでしょうか?

 研究内容が至らないという部分は即捕鯨不可に繋がるものではなく,今後の手法の進歩を待てばよいと思います。問題は,そういった JAPRA に向かい風になる内容を,このサイトをはじめ日本捕鯨協会など,捕鯨推進派から提供される情報では一切読み取れないということです。
 私自身は,捕鯨が「科学的に管理されている」限り賛成ですし,IWC において反対国の制定した非科学的なモラトリアムに対して日本団の「常に科学的姿勢で臨む管理」という一貫したテーマは非常に頼もしく思います。
 しかし,各個人がネットを通して自由に情報を参照できる今,以上のような恣意的な情報の選別を目の当たりにしてしまうと,不信感は否応なしに募ります。
 どうか,勇気を持って,すべてを公開してください。捕鯨推進に追い風になる事実。そして向かい風になる事実(試金石になる,とも言えるはずです)も。それこそが,真に科学的な姿勢といえるのではないでしょうか。
 捕鯨をめぐる議論が,大義名分すらない各国間の口上の駆け引きに成り下がらないことを強く願います。

[ご意見:3]「真に科学的な姿勢」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

ruuさんが,日本が進めている鯨類捕獲調査に関心を寄せて下さり,感謝します。しかし,コメントの内容に付きましては,いくつかの誤解があるように思います。

ruuさんは鯨類捕獲調査を「RMS 作成が最終目標とはいえ・・・」と理解しておられるようですが,日本鯨類研究所が,日本政府の委託を受けて,南極海と北西太平洋で実施している鯨類捕獲調査( JARPA II と JARPN II )は,RMS の作成を目標にしてはおりません。
 RMS (改定管理制度)は,RMP (改定管理方式)を基にして,商業捕鯨を実行するための制度であり,IWC の科学委員会の範疇ではなく技術委員会の検討事項であり,捕獲調査とは直接に関係しません。勿論,調査結果の波及効果として,より良い RMS の策定に役立つことは考えられますが・・・。

次に,ruuさんは「 JARPA に向かい風になる内容を・・・捕鯨推進派から提供される情報では一切読み取れない」と述べておりますが,“向かい風になる内容”は,反捕鯨派から沢山に発信されておりますので,我々はそれに答える情報を発信するのに追われているのが現状です。
 また,「恣意的な情報の選別」とおっしゃいますが,毎回の調査結果に付きましては,IWC の科学委員会に調査報告として提出しておりますので,それを読んで頂ければ,調査の内容が理解できます。そして,調査資料に付きましては,科学委員会が鯨類捕獲調査について周期的に実施している審査会議毎に,科学委員会が決めている方式に従って,その会議の以前に,審査に必要なすべての資料を委員による分析のために提出しておりますことをご承知下さい。

少ない人員と少ない調査研究費で頑張っている我々が,調査や IWC 科学委員会対応に追われて,一般の方々に調査の成果を説明して,正しいご理解を得ようとする努力が,これまで少なかったことを反省しております。
 日本鯨類研究所が発行しております「鯨研通信」やホームページをさらに充実するように努めますので,これからも,日本が推進している鯨類捕獲調査に一層のご理解とご支援をお願い申し上げます。

[ご意見:2]「今年度の JARPN II ついて」from:混沌 さん

今回の沖合域調査においてミンククジラの捕獲数が昨年までの捕獲数に届いてなく,発見数も極端に少なかったみたいですが,これは何か気象や海況が昨年までとかなり違っていたのでしょうか。

[ご意見:2]「今年度の JARPN II ついて」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

混沌さんが JARPN II についてご関心を持っておられるのを,嬉しく思います。

本年度の鮎川を基地とする沿岸域調査は,4月14日から5月18日までの35日の短期間で計画の60頭のミンククジラの標本を採取できましたが,6月10日から開始した沖合域調査では,ご指摘のように,ミンククジラは計画の100頭に対して,59頭の標本の採取に終わりました。これにはいくつかの理由が考えられます。
 第1に,今年度の調査時期は,遅い時期を対象にしていたために,調査開始日が昨年より20日遅く,調査開始時にはミンククジラの主群が,既に調査海域の北の外側に移動していた可能性があることが挙げられます。例えば,2000年の調査の結果も同様で,遅い時期に調査をした場合は,ミンククジラの発見・捕獲は少なくなる傾向があります(2000年におけるミンククジラの標本採集数は40個体)。
 第2に,調査船の整備の都合で,調査期間が昨年よりも20日短縮したことが挙げられます。調査期間が例年と同様に長ければ,標本数が増えたでしょう。
 第3に,例年ミンククジラの分布・捕獲が多い7海区において,今年の調査では既に水温が非常に高くなっており,ミンククジラの発見がなかったことが挙げられます(そのために,ニタリクジラの発見が多く,この海区で多くの標本の採集ができました)。
 第4に,8月中旬にミンククジラの発見・捕獲を想定していた9海区の北部海域で,ガスや台風の接近などの悪天候に見舞われ,調査が約1週間十分に行えなかったこと,などが挙げられます。
 また,例年沖合域の早い時期でミンククジラの胃内容物として多かったカタクチイワシが今年は異常に少なく,早い時期でのミンククジラの分布が,例年と異なっていたことも考えられます。

今年度の沖合域調査の結果に付きましては,今までの調査結果も併せて検討することになっており,その詳細に付きましては,やがて結果が出る予定です。
 なお,今年度の沖合域調査の速報に付きましては,財団法人 日本鯨類研究所のホームページにプレスリリースが掲載されておりますので,ご覧下さい。

財団法人 日本鯨類研究所 プレスリリースは,以下をクリックしてください。別ウィンドウで開きます。
 「2008年度第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN II)-日新丸調査船団による沖合域調査航海を終えて-

[ご意見:1]「日本が行う調査捕鯨は人類と鯨族の存続に必要だ」from:abadon さん

調査活動お疲れさまです。

 IWC の設置根拠である国際捕鯨取締条約を拝見しますと,その前文には,鯨族を厳しく資源管理をおこなって持続的に利用しましょうとの理念が記されています。そして第4条においてはその理念を達成するために,関する調査研究を行い,または締約国に推奨することができる,とされています。
 これを見ますと,日本政府の行っている鯨類調査は,まったくもってこの理念に沿うものであり,賞賛されるべきものであると思います。捕獲調査に反対するグリーンピースにおいても,調査結果からはいかにしてクジラを適切に保存できるかという保護管理に反映できるわけですので,反捕鯨・捕鯨推進の両者に有益な情報をもたらすものであると思います。グリーンピースからも感謝されていいものと思いますが,この一点をみただけでも,反捕鯨者のその思想が科学に立脚したものではないとみてとれます。

 温暖化が進展しており,極地ではその影響が顕著であると聞きます。よりよい資源管理制度の充実のため,南極海の気候変動が鯨族の生息環境や生体に与える変化を観測する調査研究はなされているのでしょうか(耕作ではレタスやブドウ作の山地が北上しているとのこと)。
 今後の鯨類調査に負託されることは,地球規模における環境変動に関する調査研究と連携を強化し,地球における食料生産能力の把握への貢献を行うことであると思います。

[ご意見:1]「日本が行う調査捕鯨は人類と鯨族の存続に必要だ」への回答from:財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

日本が推進している鯨類捕獲調査に対しまして,力強いご支持の発言をして下さり,ご意見に深い共感を覚えますとともに,とても有難く存じます。
 その中で「南極海の気候変動が鯨族の生息環境や生態に与える変化を観測する調査研究はなされているのでしょうか」とのご質問がありましたので,これについて,答えさせて頂きます。

日本が1987/88年から2004/05年まで南極海の東経35度から西経145度の広大な海域で実施した,JARPA と略称する鯨類捕獲調査におきましては,4つの調査目的の中で,環境調査としては,「南極生態系の中で鯨類の果たす役割の解明」と「環境変動が鯨類資源に与える影響の解明」の2つを取り上げておりますし,これに引き続いて2005/06年から同じ海域で開始し,現在も継続している,JARPA II の調査の4つの目的の中にも,「南極海生態系のモニタリング」を挙げております。
 すなわち,日本は南極海で1987/88年から20年の長い期間に亘って,鯨類の捕獲調査を継続して,鯨類を中心とする海洋生態系のモニタリングを,着実に,そして地道に,実施して,南極海の海洋調査と,それによる南極海の海洋生態系の変動についての正しい理解の増進に貢献していることを,世界の人々が偏見を持たずに,知って頂きたく思います。

日本が推進している鯨類捕獲調査の膨大な項目の中には,調査海域内に設定された調査コースにおいて,鯨類の目視,採集調査は勿論,気象観測,XCTD,CTD,EPCS などの海洋観測,計量魚探,IKMT記録,それによる餌調査,氷縁記録,海上漂流物記録,鯨体各種測定,各種標本採取,などがあります。そうした鯨類の環境の変動とそれに伴う鯨類資源の変化を知るための調査を目視専門船1,2隻と,目視・採集船3隻,調査母船1隻によって,12月から3月の間に実施しております。そして,これまでにも,気候,海況,餌生物,鯨類資源の変動について,多くの貴重な資料と標本を蓄積し,それらを解析して,興味ある結果が数多く得られております。

日本がこうして真摯に進めている鯨類捕獲調査に対して,悪質で,危険な,妨害活動を続けている,シーシェパードとグリーンピースのテロ集団に対する,非難の声を大きく発して下さるよう,切にお願い致します。

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