鯨論・闘論

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財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問 大隅清治 氏は,50年以上にわたって鯨類研究に従事してきました。鯨類資源生物学を専門とし,これまでに携わった数多くの調査・研究の経験を活かし,持続的捕鯨の推進を提言。最近では,小中学校でクジラをテーマにした総合学習の講師も務める“クジラ博士”です。

 大隅清治(おおすみ せいじ)氏は,1930年生まれ。1958年,東京大学大学院 生物学系研究科 博士課程修了。財団法人 日本鯨類研究所・理事長を経て,現在,顧問。

非致死的調査だけでは,南極海の鯨類調査は成功しないことが証明された

財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

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財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問筆者は以前,この欄に「鯨類資源調査における致死的調査と非致死的調査」と題する文章を載せた際に,豪州を中心として,非致死的方法による南極海調査の計画( SORP )があることを紹介し,SORP による調査が早急に実行され,その結果を日本が実施している南極海鯨類捕獲調査( JARPA )と比較して,その実行可能性について,検討できることに期待を寄せた。
 その調査が今回,豪州とニュージーランドの合同調査( AWE )としてやっと実現し,2010 年 2 月から 3 月に掛けて,南緯 65 度から 72 度,東経 150 度から西経 150 度の間の海域で実施された。この調査には,反捕鯨の急先鋒である豪州の環境大臣が,わざわざ出港式に出席して調査団を激励するなどして,鳴り物入りで調査が開始された。そして,その調査報告書が第 62 回 国際捕鯨委員会( IWC )年次会議の科学委員会に,文書番号 SC/62/O12 として,提出された。
 早速にこの調査報告書を入手して,日本がほぼ同じ海域で実施した,2004/05 年の JARPA の結果と比較した。その結果,“日本が実施している鯨類捕獲調査は,非致死的方法で全て可能である”との,反捕鯨側の主張が,宣伝倒れに終わったことが判明した。

鯨類資源調査における致死的調査と非致死的調査

財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

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財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問国際捕鯨取締条約 第8条の下で,日本が南極海で実施している鯨類の捕獲調査を止めさせるために,最近反捕鯨勢力は,国際捕鯨委員会(IWC)の中ではもちろん,直接に非合法の海賊行為や窃盗行為までして,必死の工作を展開している。その一環として彼らは,反捕鯨科学者を動員して,“クジラの調査はすべて,殺さないでできる”とする主張を盛んに宣伝している。
 完全水生であり,立体的に生活し,巨大であり,高速で遊泳する,クジラの資源調査には,クジラの特長を生かした種々の手段がある。確かに,クジラを殺さないでできる(非致死的)調査もあるが,その一方で,目的によっては,殺さなくてはできない(致死的)調査が必要であることを,彼らは認めようとしないか,あるいは故意に隠している。
 彼らが推奨する鯨類資源の調査手段として,“目視調査”,“自然標識調査”,“衛星標識調査”,“データーロガー調査”,“音響調査”,“生体組織採集”,“糞採集”,などが挙げられている。しかしながら,それぞれの手段は,鯨類への適用が理論的には可能かもしれないけれども,実際的には,調査対象とする鯨種,調査目的,調査海域の地理的,季節的条件,適切な調査船,乗組員,調査員の用意,調査費の調達等の理由から,実行が不可能である手段が多いことを理解する必要がある。

南極海で鯨類の調査をする必要性と新捕鯨構想

財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問

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財団法人 日本鯨類研究所・大隅清治 顧問「日本がなぜ遠い南極海まで行って,クジラの調査をする必要があるのか?」という質問を,捕鯨に反対する団体ばかりでなく,捕鯨の問題を真面目に心配してくれる人からもよく聞かれる。その質問に答えるには,南極海が世界の鯨類資源の宝庫であることを,最初に認識することが必要である。
 この事実は,第二次大戦による中断があったものの,捕鯨の全盛期であった,1933 年から 1978 年の間の近代捕鯨による世界の各海洋での鯨類の捕獲頭数を,国際捕鯨統計によってまとめると,よく分かる。
 すなわち,全体では 190 万 9 千頭であり,そのうち,南極海で 57 パーセント,南極海と同じクジラ資源を利用した南半球沿岸で 19 パーセント,北太平洋で 22 パーセント,北大西洋で 2 パーセントであり,南半球産の鯨類の捕獲が地球全体の 76 パーセントを占めていたことから歴然である。南半球産の鯨類は北半球産よりも大型であるので,捕獲クジラの生物量を考慮すると,その割合はさらに増加する。
 (※注:生物量=任意の空間内に存在する生物体の総量を,重量あるいはエネルギー量で示したもの。)

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